研究課題/領域番号 |
16H05485
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
富田 浩史 岩手大学, 理工学部, 教授 (40302088)
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研究分担者 |
片山 統裕 東北大学, 情報科学研究科, 准教授 (20282030)
福田 智一 岩手大学, 理工学部, 教授 (40321640)
菅野 江里子 岩手大学, 理工学部, 准教授 (70375210)
田端 希多子 岩手大学, 理工学部, 特任研究員 (80714576)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝子治療 / 網膜色素変性症 / オプトジェネティクス |
研究実績の概要 |
平成28年度、ChR2を神経節細胞に恒常的に発現するトランスジェニック(TG-ChR2)ラットの視細胞変性を変性させ、AAVベクターを用いて多波長感受性遺伝子(mVChR1)を遺伝子導入し、2種の波長感受性の異なるタンパク質が発現するラットの視機能を評価した。共通の感受波長域では、若干、反応性の低下が認められたものの、各遺伝子は各々の機能を示すことが確認された。本年度、この反応性低下を示す理由として、パッチクランプ法による解析の結果、同一細胞に両遺伝子が発現した場合に生じることが判明した。また、2つの遺伝子を異なる細胞に導入する手法として、プロモーター制御による手法ならびにウイルスの剤型を検討した。プロモーター制御では、ON型双極細胞特異的プロモーターである代謝調節型グルタミン酸受容体6のプロモーター(mGluR6)を用いた。AAV2-mGluR6-mVChR1のウイルス溶液を硝子体内に投与した場合はほとんど導入が確認されなかったものの、網膜下への投与で局所での発現が確認された。しかし、その範囲は限定的で、また、視覚誘発電位測定においても明瞭な反応は記録されなかった。視覚誘発電位が記録されなかった要因として、視細胞変性後の網膜シナプスのリモデリング、単に導入範囲が限定されていることなどが考えられるが、現時点では不明である。一方、ウイルスの剤型では、ゼラチンを主体としてウイルスを固形化する方法を検討した。培養細胞を用いた実験では、固形化したウイルスを置いた場所に限局して高効率に遺伝子導入できることが判明したが、網膜上に設置した場合、ゼラチンの副作用と思われる所見が認められた。以上のように、選択的に遺伝子導入を行う方法については、さらなる検討が必要と考えられる。行動解析はシャトルアボイダンスによる色覚測定を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
個々の細胞をターゲットした遺伝子導入法に関しては、解決すべく課題が多く残されているが、その一方で、新規遺伝子の候補が数個生まれるなど、新たな研究展開が始まっている。また、今回、ウイルスを固形化することに成功し、網膜には利用できなかったものの、他の分野の遺伝子導入には有効な方法となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
今回、ON型双極細胞をターゲットとした遺伝子導入では、充分な遺伝子導入効率が得られなかったことから、CRISPR-CAS9を利用したトランスジェニックラットを作製することとした。CRISPR-CAS9でのTG作製は、これまでの方法より遥かに短期間で作製できることから、TGラットとAAVによる遺伝子導入とを組み合わせ、色覚の有無を検討する。 特に色覚検査では、オプトモーターを用いた空間周波数測定にかわり、シャトルアボイダンスシステムをを用いた判定が簡便である。平成30年度は行動解析を中心に評価を進める予定である。
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