研究課題/領域番号 |
16H05487
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
不二門 尚 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50243233)
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研究分担者 |
森本 壮 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00530198)
松下 賢治 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (40437405)
神田 寛行 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50570248)
三好 智満 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (70314309)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電気刺激治療 / 網膜色素変性症 / 人工網膜 / ハイブリッド治療 / ラマン分光 |
研究実績の概要 |
当該研究は、電気刺激の網膜神経保護・賦活効果に関するメカニズムを解明する基礎的研究と、網膜電気刺激の神経保護効果に関する臨床研究、人工網膜による電気刺激の視機能改善に関する臨床研究を目的としている。基礎研究では、これまでにラマン顕微鏡を使うと、神経細胞死の初期の細胞内変化が、組織染色をしなくても観測できることを示したが、今年度はチトクロームCをCFPでラベルした細胞と、ラマン画像の相関が良いことを示し、ラマン画像が細胞内のチトクロームCの濃度を反映していることを確認した。補償光学(AO)眼底カメラを用いた傍中心窩の錐体密度の自動計測システムを確立した。本システムにより初期網膜色素変性症(RP)における軽微な視機能の低下を短時間で判定可能となり、経角膜電気刺激 (TES)の視細胞保護効果を評価する指標として使用可能となった。人工網膜の埋植手術の適応となる患者さんを決める検査として、TESで疑似光覚が得られる閾値電流値を用いているが、TES検査を再現性よく行うための標準化マニュアルの作成を行った。本マニュアルを用いることにより、人工網膜の多施設研究がスムーズに進むことが期待される。2014-15年度に人工網膜の臨床研究を行った3例中2例において、埋植術後6か月以上経過した時点でスイッチOFF時の視力が術前よりも改善したことが分かった。継続的な電気刺激が神経賦活に有効な可能性があり、今後人工網膜の治験を行い、多数例で検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網膜色素変性に対して、初期から末期までの電気刺激による機能回復を目指す当該研究では、基礎研究として神経細胞死をラマン画像で観察する基礎を確立し、補償光学眼底カメラでは、錐体の密度を定量化する技術を確立した。これらの成果は電気刺激による網膜色素変性の進行予防法に関して、次年度以降の研究の基礎を確立する重要な成果である。また、末期の網膜色素変性に対する人工網膜に関しては、治験を行う上での基礎となるマニュアルを作成し、次年度以降の基礎を確立したという意味で、着実な進捗状況といえる。
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今後の研究の推進方策 |
ラマン分光画像に関しては、培養神経細胞を電気刺激する研究がウェルが小さいと困難であることがわかり、大きめのウェルで刺激が十分行える条件を検討する。補償光学眼底カメラの研究では、網膜色素変性患者の継時的な錐体密度の計測を行う予定である。人工網膜の実用化に関しては、治験を具体的に進める予定である。
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