研究実績の概要 |
小腸移植は腸管不全患者における唯一の根本治療であるが、急性拒絶反応の発生率が高く、5年のグラフト生存率が60%に留まっており、最適な免疫抑制プロトコールの確立が急務である。本研究では、腸管リンパ球のホーミングをターゲットとしたすでに臨床応用可能な免疫抑制剤(Anti- α4β7 integrin抗体, Anti-TNF α抗体)をカニクイザル小腸移植モデルで使用し、その安全性と有効性(拒絶反応発生率)を評価することが主目的である。 手術施設である滋賀医科大学動物生命科学センターにおいて、これまでに3回の非生存実験と2回の生存実験を行った。 3回の非生存実験は、術式の確立とシミュレーション目的であり、2回の生存実験は実際に免疫抑制剤を投与して、それぞれ1ヶ月間管理を行い、拒絶反応のモニタリングを行った。 研究計画書にある、Group分けに沿って、まずは従来の免疫抑制剤による拒絶の発生時期についてデータを採取している。滋賀医科大学のセンターに、拒絶の診断を行う内視鏡システムを導入し、定期的な観察と生検検査が可能となった。 グラフトのモニターは、weeklyでのストマからの内視鏡と、血液データ採取を行っている。術後1ヶ月の時点で、移植腸管及び自己腸管などからリンパ球を採取し、Th-1,2,17,TFHの解析を表面マーカーであるCXCR3, CCR4, CCR6, CXCR5をもちいて行い、移植腸管でのTリンパ球の動向データを集積中である。 また、ドナーのMHC特異的抗体を用いることで、レシピエント中におけるドナーのリンパ球の動向を経時的に追うことが可能になり、免疫反応の変化を捉える上で有効なデータが集積されている。
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