研究課題/領域番号 |
16H05495
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
舟山 眞人 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40190128)
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研究分担者 |
久志本 成樹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50195434)
藤田 友嗣 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50721974)
臼井 聖尊 東北大学, 医学系研究科, 講師 (80567884)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プローブエレクトロスプレーイオン化法(PESI) / PESI-MS/MS / 薬毒物 / 質量分析 / 直接分析 / 臨床中毒 |
研究実績の概要 |
急性薬物中毒が疑われる事案において、その中毒起因物質を迅速かつ簡便に特定することにより、適切な初期治療を行うことが可能となる。しかし、中毒を引き起こす物質は無数にあり、その特定には高度な技術と時間が必要である。現状の機器分析システムでは、分析結果の報告までに少なくとも2 時間以上かかり、初期治療への遅れから病状悪化の可能性も生じ得る。そこで、患者血液を採取後、10 分以内に薬毒物を特定する新たなシステムを開発し、救急医療における中毒診療に新たな診療展開を構築することを目指すのが本研究の目的である。本年度は日本中毒学会が指定する「分析が有用な中毒起因物質」にも含まれるアセトアミノフェン(APAP)を対象として、プローブエレクトロスプレーイオン化-質量分析法(PESI-MS/MS)を用いて検討をおこなった。既知濃度のAPAPを含有する血清1µLに対して内標準物質を添加した後、そのままPESI-MS/MSによる分析を行なった。その結果、定量用に作成した血清マトリックスの検量線に関して、検出目標とする中毒領域において十分実用的な検量線が作成できた。測定時間は試料あたり0.3分と迅速であり、結果解析を含めても10分以内には分析を完了することができた。実サンプルへの応用を試みたところ、LC-MS/MSで測定した定量値とPESI-MS/MSで測定した定量値に大きな違いはみられなかった。本法は初期治療へ貢献可能な薬毒物迅速スクリーニング法として有用であることが示唆された。次年度は本法の分析対象薬毒物を増やし臨床での利用を目指していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、最初にアセトアミノフェン(APAP)を対象としてプローブエレクトロスプレーイオン化-タンデム質量分析法(PESI-MS/MS)による分析法の開発に着手した。研究開始当初は薬毒物を血清から抽出した後、PESI-MS/MSによる分析を行なう計画であったが、血清を前処理することなく直接分析(内標準物質の添加のみ)を試みたところ、血清中のAPAPを直接定量できることがわかった。測定時間は試料あたり0.3分と迅速であり、結果解析を含めても10以内で分析を完了することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、日本中毒学会が指定する「分析が有用な中毒起因物質」を中心として、PESI-MS/MSによる血清中薬毒物の直接分析をさらに推進していく予定である。また、同時にレーザーダイオード熱脱離イオン化タンデム質量分析法(LDTD-MS/MS)による迅速分析法の開発にも着手する。
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