研究課題
1.Fim線毛およびMfa線毛のピリンタンパク質の構造決定:V型線毛のなかで分子遺伝学的解析が進んでいるP. gingivalisの二つの線毛(Fim線毛とMfa線毛)についてそのピリンタンパク質の構造を決定する。現在、主要ピリンであるFimA(type IV)の構造が解析されているのみであり、28年度にはFimA(type I)とFimA(type II)の結晶化に成功した。スプリング8でX線結晶構造解析を行う予定です。FimAのタイプは本菌の病原性と深く関連があるとされており、構造上の相違から病原性の違いを検討する。2.ピリンの重合におけるC末端領域の重要性:FimA(主要ピリン)およびMfa2(基部ピリン)についてそれらのC末端を部分的に欠損した変異ピリンをP. gingivalisで発現させ、線毛の重合に影響を及ぼすかどうかを調べた。FimAのC末端を3アミノ酸残基欠損したのみで主要線毛タンパク質の重合がまったく起こらなかった。また、Mfa2のC末端を同様に3アミノ酸残基欠損しただけで基部ピリンとしての働き、すなわち、線毛を菌体に把持し、線毛の長さを調節する機能が失われた。これらの結果は主要ピリンの重合には主要ピリンのC末端領域が必須であること、基部ピリンについても主要ピリンと連結する際は基部ピリンのC末端領域が関係することが示唆された。3.システイン置換法による重合機構の解明:C末端が前方のピリンタンパク質のN末端の溝に挿入されているかどうかを検証するため、それらのストランドのアミノ酸残基をシステインに置換させ、酸化条件下で結合がおこるかどうかを調べた。その結果、予想通りの結果であった。4.セルフリー系での線毛再構成:組換えFimAタンパク質をP. gingivalisのRgpプロテアーゼで処理すると試験管内で重合が生じ、線毛が形成されることがわかった。この再構成Fim線毛についてクライオ電顕にて観察した。5.いままでの研究をCell誌に発表した。
1: 当初の計画以上に進展している
線毛の形成機構の解明について1年目で当初の目的のかなりの部分を達成でき、Cell誌に発表した。
1.FimAタンパク質のtype I, type II, typeIVの分子構造をX線結晶構造解析より導き、それらを比較して構造の相違を明らかにする。2.インビトロで再構成したFimAタンパク質によるFim線毛を用いて宿主細胞への影響を調べる。3.クライオ電顕にてインビトロで再構成したFimAタンパク質によるFim線毛の構造モデルを構築する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Cell
巻: 165 ページ: 690-703
10.1016/j.cell.2016.03.016