研究課題/領域番号 |
16H05505
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
羽毛田 慈之 明海大学, 歯学部, 教授 (90164772)
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研究分担者 |
沢村 達也 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (30243033)
伊東 順太 城西大学, 薬学部, 助教 (40609096)
小笠原 徹 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20359623)
岡安 麻里 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (10610941)
森 芳史 明海大学, 歯学部, 助教 (60757954)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 細胞融合 / LDL受容体 / LOX-1 / 細胞膜外葉 / 炎症性骨破壊 |
研究実績の概要 |
Low-density lipoprotein receptor (LDLR)とlectin-like oxidized LDL receptor-1 (LOX-1)は破骨細胞の細胞融合過程に重要な働きを持つがその分子機構は未解決である。2018年度は、それら受容体の作用機構を解明することを目的とし、LDLR/LOX-1 double KO (dKO)マウスを作製し、in vitro破骨細胞形成系から解析した。 LDLR/LOX-1 dKO破骨細胞前駆細胞から形成された破骨細胞数は野生型(WT)破骨細胞前駆細胞からのそれと同等であったが、破骨細胞の面積および細胞融合頻度(fusion index)はWT破骨細胞に比べ大きく減少した。このようにLDLR/LOX-1dKOマウスは、LDLR single KO (sKO)マウスと同様の機構から破骨細胞融合が阻害されていた。 細胞膜内葉に多く分布するphosphatidylethanolamine (PE)の細胞膜外葉への局在変換は破骨細胞の細胞融合に関与する。WT破骨細胞系細胞は細胞膜周囲に発達したfilopodiaを介して破骨細胞系細胞と接触し、それらfilopodiaの細胞膜外葉にPEが多く分布していた。しかし、LDLR sKOおよびLDLR/LOX-1 dKO破骨細胞系細胞では細胞膜外葉PE分布変換が大きく減少し、その分布変換を触媒するATP-binding cassette transporter (ABC) G1のmRNA発現量も大幅に減少した。さらに、Abcg1 siRNAでAbcg1 mRNA量を減少させると破骨細胞形成、破骨細胞サイズおよびfusion indexともに大きく減少した。以上よりLDLR sKOとLDLR/LOX-1dKO破骨細胞の細胞膜外葉PE分布減少はABCG1の発現減少に起因すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞外LDLのLDL受容体を介した細胞内への取り込みが破骨細胞の細胞融合に重要な役割を持つこと、その細胞融合にLDL受容体に依存したABCG1発現と細胞膜リン脂質内葉から細胞膜外葉へのphosphatidylethanolamineの分布変換が大きく関わっていることが2018年度で大きく進歩した。また、炎症性骨破壊の治療薬の候補として、ポリメトキシフラボノイドであるスダチチンが有効であることを動物実験から明らかにし、その成果をPlos ONEに掲載した。しかし、LOX-1のconditional knockout マウス実験に関しては、進行が遅れていたが,本年度でようやくconditiona lknockout マウスの飼育が順調になり、来年度に向けて実験可能になった。総じて、現在の進捗状況は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度で、破骨細胞の細胞融合に細胞内へのコレステロールの取り込み機構と細胞膜外葉へのphosphatidylethenolamine (PE)の局在変換が大きく関わっていることが明らかとなり、その局在変換にリン脂質のflip-flopを司るATP-binding cassette (ABC) transporterであるABCG1やABCB4などが関与することが明らかとなった。そこで2019年度は、さらにそのABC transportersと細胞内コレステロール量との関係、それと関連した転写因子LXRの活性化との連携を分子レベルで解析する。それと同時に、ABCG1 KOマウスを用いて破骨細胞の細胞融合におけるABCG1の役割と細胞膜外葉へのPE局在転換の意義を分子生物学的に明らかにして行く。また、遅れ気味であった破骨細胞特異的LOX-1 cKOを用いた炎症性骨破壊実験モデルの作成を合わせて遂行して行く。細胞内の酸化状態を標的とした新しい炎症性骨破壊治療薬の探索に関しては、スダチチンに変わる新たな抗酸化化合物を探索する。
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