研究課題/領域番号 |
16H05507
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 教授 (00300830)
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研究分担者 |
藤田 智史 日本大学, 歯学部, 准教授 (00386096)
山本 清文 日本大学, 歯学部, 助教 (30609764)
崔 翼龍 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, ユニットリーダー (60312229)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 光学計測 / 異常疼痛 / 可塑性 |
研究実績の概要 |
下歯槽神経損傷による大脳皮質,特に島皮質・二次体性感覚野複合体における応答性の変化をマクロ的視点から把握するために,膜電位感受性色素を用いたin vivo光学計測による実験を行った。 生後3-7週齢のラットをイソフルランで全身麻酔した後,下歯槽神経を剖出し,約2 mm切除した。止血後,皮膚を縫合して回復させる。この処置を受けたラットは,下歯槽神経切除モデルとして使用し,1-4週間後に実験に供し,その神経生理学的特性を正常動物と比較した。 生後6-10週齢のラットをウレタンで麻酔し,中大脳動脈と嗅溝の交点を中心とした骨窓を開ける。開窓した大脳皮質に膜電位感受性色素(RH1691)を負荷し,実体顕微鏡にCCDカメラを搭載した光学計測システムを用いて神経活動を光学的に記録した。その結果、下歯槽神経切断モデルにおいて、上顎臼歯歯髄の電気刺激で誘発される興奮伝播が著しく増大していることが明らかになった。そして、この増大傾向は、幼弱期(3週齢)で切断手術を受けたモデルにおいては2ヶ月以上持続するのに対して、6週齢で切断手術を受けた動物では1ヶ月後には回復することが明らかとなった。すなわち年齢依存性が認められることが判明した。 光学計測法による結果は、ニューロンやグリア細胞全体の活動の総和を観察していることから、どのようなニューロンがこの応答に関わっているかを明らかには出来ない。そこで現在、興奮性の増大が生じる領域に焦点を当てて,2光子励起レーザー顕微鏡によるin vivoカルシウム・イメージングを行っている。この実験によって,モデル動物において興奮性ニューロンと抑制性ニューロンのどちらに興奮性の増大が生じるのかを明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
下歯槽神経切断モデルの作製および光学計測法による皮質活動性の評価がほぼ終了し、次の段階である二光子励起レーザー顕微鏡によるカルシウム・イメージングに進んでいることから、進歩状況は順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
2光子励起レーザー顕微鏡によるin vivoカルシウム・イメージングを島皮質に対して適用する。そして,モデル動物において興奮性ニューロンと抑制性ニューロンのどちらに興奮性の増大が生じるのかを明らかにする。 実験としては、ラットをウレタン麻酔した後,島皮質および二次体性感覚野領域を開窓する。細胞内記録用の細い鋭利なガラスピペットを作製し,Oregon green BAPTAを観察部位に30分くらいかけて注入する。その後,開窓部位は寒天で被覆してカバーガラスを設置する。上顎および下顎第一臼歯に電極を挿入して電気刺激を行い,カルシウム応答を記録する。 さらにこの興奮性増大効果のメカニズムを探るため、島皮質・二次体性感覚野を含む厚さ350 μmの急性脳スライス標本において,Venus陰性(興奮性)錐体細胞とVenus陽性(GABA作動性)抑制性ニューロンから同時ホールセル・パッチクランプ記録を行う脱分極性ならびに過分極性電流パルスによる発火特性・膜応答特性によってニューロンのサブタイプを同定し,モデルと正常動物での興奮性および抑制性シナプス入力源の違いを明らかにすることで,神経損傷による可塑的変化のメカニズムを解明する。 手技としては、Caged glutamateを灌流投与した状態で,共焦点レーザー顕微鏡を用いてUVレーザー光を脳スライス標本に局所的に照射することで,瞬間的にグルタミン酸を照射部位に暴露する。格子状にレーザー光を照射することによって,各領域からの興奮性もしくは抑制性ニューロンへの投射の空間的パターンを明らかにする。
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