研究課題
下歯槽神経の損傷による異常疼痛は末梢組織が治癒した後も続くことがあり,中枢神経系における変化が生じている可能性が指摘されている。我々は,平成28年度に光学計測法を用いて,下歯槽神経切断モデルでは上顎臼歯歯髄への電気刺激に対する島皮質の興奮応答が著しく増大することを明らかにした。また, in vivoカルシウム・イメージングによって,興奮性ニューロンのみならず抑制性ニューロンの活動性増大を伴うことを明らかにした。平成29年度には,下歯槽神経切断によって生じる島皮質におけるシナプス伝達を検討した結果,切断モデル群のII/III層錐体細胞およびGABA作動性ニューロンは,深層から強力な興奮性入力を受けることが明らかになった。平成30年度は,大脳皮質の異常興奮についてシナプスレベルでのメカニズムを明らかにするため,複数のニューロンから同時にホールセル記録を行った結果,抑制性ニューロンから興奮性ニューロンへのシナプス伝達が減弱していることが明らかになった。さらに,視床→皮質シナプス結合の特性を明らかにするため,視床腹後内側核へChR2 遺伝子配列を含むadeno-associated virus (AAV) ベクターを微量注入し,視床から島皮質・二次体性感覚野へ投射するニューロンの神経終末にChR2 を発現させた。そして,遺伝子導入1-3 週後に島皮質急性脳スライス標本を作製し,蛍光観察下でVenus 陰性の興奮性ニューロンとVenus 陽性であるGABA 作動性抑制性ニューロンから同時にホールセル記録を行い,LED装置を組み込んだパッチ・クランプ用顕微鏡の対物レンズ先端から照射される青色 (450 nm) 光のON・OFF にてChR2 を活性化した。その結果,視床―皮質投射経路の選択的刺激によるEPSCを記録することができた。一方で,その振幅の分散が大きいことが判明した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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