研究課題/領域番号 |
16H05508
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研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
宇田川 信之 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (70245801)
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研究分担者 |
小出 雅則 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (10367617)
中道 裕子 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (20350829)
中村 美どり 松本歯科大学, 歯学部, 准教授 (90278177)
溝口 利英 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (90329475)
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 骨代謝共役 / 骨吸収 / 骨形成 |
研究実績の概要 |
【目的】 ITAMは、T細胞やB細胞の受容体と会合する細胞膜アダプター分子の細胞内ドメインに共通してみられるモチーフとして発見された。破骨細胞では、DAP12とFcRγの発現が高く、ダブル欠損マウスは大理石骨病を呈する。最近、DAP12と会合する免疫グロブリンスーパーファミリー分子として、シアル酸受容体タンパク質Siglec-15が同定された。Siglec-15は破骨細胞の分化に伴って誘導される。Siglec-15遺伝子欠損マウスは、骨吸収が抑制され骨量が増加するが、破骨細胞数は減少しない。 【方法と結果】 (1)骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系で形成された破骨細胞のアクチンリング形成をSiglec-15抗体は濃度依存的に阻害した。また、象牙質切片上の吸収窩形成を抑制した。(2)骨髄細胞培養系にRANKLとM-CSFを添加し破骨細胞が誘導される条件で、Siglec-15抗体はTRAP陽性の多核破骨細胞の分化を阻害した。一方、アルカリホスファターゼ陽性の骨芽細胞が多数誘導された。この時、多核破骨細胞形成は完全に抑制されたが、単核TRAP陽性前破骨細胞の存在が認められた。(3)骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系でRANK陽性の破骨細胞前駆細胞(qOP)が出現する。Siglec-15抗体はqOPの形成に対しては抑制効果を示さなかった。(4)我々は、破骨細胞由来のLIFがスクレロスチン抑制を介して、骨形成を促進させるカップリング因子である可能性を見出した。Siglec15抗体で処理した破骨細胞においてカテプシンKおよびRANKの発現維持と同様に、LIF発現も維持されていた。以上の結果から、Siglec-15抗体で処理した破骨細胞における骨形成の促進作用に、LIF発現の維持が関与する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Siglec-15抗体は、多核破骨細胞の分化と骨吸収機能を阻害すると共に骨芽細胞の分化を促進する可能性を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1) スクレロスチン遺伝子発現のモニター解析 炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1)は、スクレロスチンの発現を誘導し骨形成を阻害する可能性が考えられる。そこで、前年度に作製完成したSost-GFP KIマウスの頭蓋冠に対して炎症性サイトカインやPTHを局所投与することによる頭蓋冠における骨細胞のスクレロスチンの発現ともにOPGの発現を経時的に解析する。骨吸収と骨形成を促進する信号が骨代謝共役(カップリング)に果たす作用を明らかにする。 (2) 破骨細胞からの骨形成リバースシグナルの解析 RANKLに結合するW9ペプチドは骨芽細胞表面のRANKLに結合し骨芽細胞分化を誘導するという事実を明らかにした後、生体内でのRANKLリバースシグナルの本体がRANKであるのか、または新規のリガンドが存在するのかについて解明する。破骨細胞前駆細胞にRANKが発現していないc-Fos遺伝子欠損マウス(大理石骨病マウス)を用いて、RANKのリバースシグナル解析を行う。RANKL-RANKシグナルは、骨吸収のみならず、骨芽細胞による骨形成にも重要な役割を果たしていることを立証する。
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