研究実績の概要 |
我々は、破骨細胞の分化と骨吸収機能を制御する骨芽細胞に発現するRANKLのデコイ受容体であるオステオプロテゲリン(OPG)の重要性について解析してきた。OPGの遺伝子欠損マウス(OPG-/-マウス)は、骨吸収が著しく亢進し骨粗鬆症を呈するが、骨形成も亢進する大変興味深い骨代謝カップリングモデルマウスである(Endocrinology 144:5441, 2003)。さらに我々は、OPG-/-マウスの歯槽骨吸収について解析した結果、OPG遺伝子の欠損によって著しい歯槽骨吸収が惹起されることを見出した(Endocrinology 154:773,2013)。この歯槽骨破壊は、骨粗鬆症治療薬として応用されているRANKL中和抗体やリセドロネート(ビスホスホネート)によって防止できることを明らかにした。また、野生型マウスの皮質骨や歯槽骨においては、骨細胞にOPGの発現が強く認められると共に、骨形成抑制因子であるスクレロスチン発現が強い。一方、OPG-/-マウスでは、スクレロスチン発現が低下していた(J Bone Miner Res 32:2074, 2017)。以上の実験結果から、石灰化組織の破壊吸収に関与するRANKLのデコイ受容体であるOPGは、骨細胞が産生することによって石灰化組織の結晶化状態を保つ働きを担っている可能性が考えられた。我々は、破骨細胞自身が発現・産生する LIF(白血病阻止因子)が骨細胞におけるスクレロスチンの発現を低下させ、骨芽細胞性の骨形成を促進する可能性を示した(J Bone Miner Res 32:2074, 2017)。そのような状況の中、我々は、成熟破骨細胞は、RANKを表面に発現するエクソソームを分泌し、骨芽細胞内のRANKLに結合し、PI3K-Akt経路を活性化することにより、骨芽細胞活性を上昇させるというリバースシグナルの存在様式を証明した(Ikebuchi Y et al. Nature 561:195, 2018)。
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