研究課題/領域番号 |
16H05510
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
森田 圭一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10396971)
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研究分担者 |
坂本 啓 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (00302886)
佐々木 善浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90314541)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 癌 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
頭頸部がん治療においてもセツキシマブなどの分子標的治療薬が注目されているが、標的となる分子経路に異常を生じていない症例では効果が期待できない。頭頸部がんでは特にTP53およびCDKN2Aの遺伝子変異が高率に生じており、細胞周期制御の重要性があらためて注目される。そこで、口腔がんにおける新規細胞周期制御分子の機能を解析するとともに、口腔がん体細胞変異解析結果から同定された細胞周期関連遺伝子の機能回復をも視野に入れた新しい細胞周期制御法を開発する。 A) 新規細胞周期制御分子同定・機能解析 口腔がんの化学/放射線療法抵抗性予測分子Galectin-7がサイクリン依存性キナーゼ(CDK X)を通じて細胞周期制御に関連していることを見出した。一方次世代シーケンサーによりがん関連50遺伝子のターゲットリシーケンスを口腔がん症例において実施した結果、EGFRを含めたチロシンキナーゼレセプターの遺伝子増幅が口腔がんの遠隔転移に関連することが明らかとなり、さらにTP53 (p53)の変異が同時に検出される場合には、より予後が悪いことがあきらかとなった。 B) in vitroナノ磁性分子導入法の確立 ナノゲル-酸化鉄ハイブリッドにRhodamineでラベルしたマテリアルを基本として、殺細胞性抗がん剤などの低分子化合物やタンパク質の細胞導入効率は従来法と比較して100倍以上であることが判明した。 C) in vivoナノ磁性分子導入法の検討 ナノゲル-酸化鉄ハイブリッドは血液中に注射しても生体埋込み磁石によってトラップされることはなく体内を循環してしまうことがあきらかとなったため、ハイブリッドを導入したい目的部位表面にネオジム磁石を設置した上で、磁石と反対側の病変深層にナノゲル-酸化鉄ハイブリッドを組織内注射することにより、がん組織に導入されるナノゲル-酸化鉄ハイブリッドを観察可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次世代シーケンサーによりがん関連50遺伝子のターゲットリシーケンスを口腔がん症例において実施した結果、EGFRを含めたチロシンキナーゼレセプターの遺伝子増幅が口腔がんの遠隔転移に関連することが明らかとなり、さらにTP53 (p53)の変異が同時に検出される場合には、より予後が悪いことがあきらかとなり、Cancer Scienceに発表した。また、ナノゲル-酸化鉄ハイブリッドを導入したい目的部位表面にネオジム磁石を設置した上で、磁石と反対側の病変深層にナノゲル-酸化鉄ハイブリッドを組織内注射することにより、がん組織に導入されるナノゲル-酸化鉄ハイブリッドを観察可能となったことに関しては論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
A) 新規細胞周期制御分子同定・機能解析 前年度に引き続き、新規細胞周期制御分子としてGalectin-7の下流分子を探索する。得られた新規同定タンパクは、さらに強制発現系を用いてその機能解析をすすめる。一方次世代シーケンサーによりがん関連50遺伝子のターゲットリシーケンスを口腔がん症例において実施した結果、EGFRを含めたチロシンキナーゼレセプターの遺伝子増幅が口腔がんの遠隔転移に関連することが明らかとなり、さらにTP53 (p53)の変異が同時に検出される場合には、より予後が悪いことがあきらかとなったため、口腔がん培養細胞のがん関連50遺伝子のターゲットリシーケンスを行い、同様の遺伝子プロファイルをもつ培養細胞を同定して、新旧薬剤の感受性を評価するとともに、高転移性を示すメカニズムについて検討する。 B) in vitroナノ磁性分子導入法の確立 既存・新規複合分子種のスクリーニングをすすめるとともに、遺伝子プロファイルごとの培養細胞にハイブリッドを作用させた場合の細胞増殖を検討するとともに、高転移性メカニズムの解明を試みる。 C) in vivoナノ磁性分子導入法の検討 前年度までに明らかとなったin vivoナノ磁性分子導入法の条件をさらに最適化し、in vitroナノ磁性分子導入によって薬効が確認されたハイブリッドを口腔がんモデルマウスに適応して、生体内での薬効を評価する。評価項目は、移植されたがん組織の大きさの変化、骨浸潤能、転移率、生存率とする。また、既存のがん動物モデルを用いた解析にとどまらず、逆の発想のナノ磁性粒子細胞導入によるがん動物モデルの作製・解析の可能性も追求する。
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