口腔扁平上皮癌208例に対して、EGFRとMETの免疫組織化学染色(IHC)を施行した。EGFRのIHCの結果はスコア0:23例、1+:46例、2+:79例、3+:60例であった。EGFRのゲノム増幅が認められた症例はすべてIHCスコア2+または3+で、それぞれその中の7.6%、15%であり、EGFRの遺伝子増幅とタンパク発現に相関が認められた(P=0.024)。遠隔転移はIHCスコア3+の症例で13.3.%と最も多かった。METのIHCの結果はスコア0:75例、1+:92例、2+:32例、3+:9例であった。METのゲノム増幅は3例と少数であったため、IHCスコアとの関連は認められなかった。スコア2+、3+では、20%を超える症例で遠隔転移を認めた(P=0.026)。MET 高発現41例中9例(22.0%)、EGFRおよびMETの両方が高発現の15例中6例(40.0%)で遠隔転移を認め、統計的に有意差を認めた(P=0.003、P=3.41×10^-5)。Kaplan-Meier plotter を用いてEGFRおよびMETのmRNA発現の意義を評価した。TCGAのHNSCC症例において、EGFR mRNA高発現は有意に予後不良であった。またMET mRNA高発現も予後不良と関連していた。一方、EGFRまたはMET高発現に加えてTP53変異を伴う症例において、TP53変異の相加効果としての生存率の減少は認めなかった。さらにEGFRおよびMETの両方が高発現している症例は15例と少ないながら、5年累積生存率は22.0%と、その他の症例85.8%より有意に低かった(P<1.0×10^-9)。多変量解析ではEGFRとMETのIHCスコアが独立した予後予測因子であることが示された。
|