研究課題
SSモデルマウスを使用して、SSの標的臓器である唾液腺組織中のマクロファージの動態を解析し、これまでにSS発症に呼応して標的臓器の唾液腺中にF4/80陽性マクロファージが増加することを見出した。さらにSS発症マウスにおいてM1マクロファージが増加することを確認している。病態の進行とともに唾液腺に増加するマクロファージが骨髄由来のマクロファージであることは、SSモデルマウスに骨髄由来単球を移入することによって確認しているが、浸潤してきたマクロファージのマーカーや機能についてさらに詳細に検討する必要があると考えている。またマクロファージを誘導するメカニズムを解析するために、浸潤してきたマクロファージのケモカイン受容体の発現、病態に応じた唾液腺組織でのケモカイン発現を マイクロアレイ等を利用して詳細に検討する。多くの組織において恒常性維持のためにマクロファージは存在するが、組織によっては血中の単球が浸潤してくるのではなく、常在のマクロファージがその機能を担っている(肝臓のクッパー細胞等)。唾液腺にも常在マクロファージが存在するのではないかと考え、健常マウスの唾液腺マクロファージを解析したところ、上述の浸潤マクロファージとは異なる分化マーカーを示すマクロファージの存在を見出している。これら2種類の唾液腺マクロファージの病態への関与を解析し、マクロファージを中心としたサイトカイン・ケモカインネットークを明らかにすることができれば、唾液腺導管周囲の種々の免疫担当細胞の浸潤・集積メカニズムを知ることができると期待している。
2: おおむね順調に進展している
SSモデルマウスの唾液腺におけるマクロファージの動態を解析し、病態に応じてマクロファージの数が増加することを明らかにした。また一般的なM1、M2マクロファージマーカーでは、その分類が難しかったが、CD206及びMHC ClassII、iNOS等のマーカーとCD11b発現の強弱により分類可能であることを見出した。しかしこれらのマーカーによる分類が、M1、M2に対応するかは、検討の余地がある。これらのマーカーを使用して、唾液腺マクロファージをそれぞれ分離し、それぞれの細胞集団のケモカインやケモカイン受容体発現をPCR-arrayにより解析した結果、それぞれのマクロファージが産生するケモカインは大きく異なっていることがわかった。PCR-arrayで差があったケモカイン及びその受容体についての発現は、定量PCRにより確認済みである。従って、これらのマクロファージから産生されるケモカインの病態に応じた発現とT細胞浸潤を対応させて解析しようと考えている。上述のそれぞれのマクロファージが産生するケモカインに大きな差あったという結果は、それぞれの集団の機能も異なっていると考えられ、現在、その機能や病態に応じた発現を解析中である。また解析中ではあるが、健常マウスの唾液腺には導管周囲に常在マクロファージが存在し、上述のどちらかのマクロファージ集団が常在マクロファージではないかと考えている。それぞれのマクロファージの病態発症への関与を明らかにし、病態発症におけるマクロファージの重要性という新たの方向性からSS発症機序解明に貢献できると考えている。
唾液腺特異的な病態に応じたそれぞれのマクロファージ集団をソーターにより分離調製し、精製した唾液腺マクロファージの培養系において、貪食能や抗原提示能を確認する。これらの実験系のコントロールには骨髄由来マクロファージを使用し、貪食能測定には、蛍光ビーズだけではなく、アポトーシスを誘導した唾液腺上皮細胞等を利用する。さらに病態T細胞の増殖を指標に抗原提示能等を検討する。抗原にはアポトーシスを誘導した唾液腺細胞を用いる予定である。唾液腺マクロファージの貪食能や抗原提示能が障害(亢進)されていた場合は、貪食能や抗原提示能に関与する分子を検索して、候補遺伝子が見つかった場合には、ベクターによるマクロファージでの強発現等により機能回復を試み、マクロマクロファージの唾液腺での機能障害がSS発症起因の一因であることを立証する。また当該マクロファージを枯渇させることができれば、病態への関与が確定され、病態抑制の足がかりになる。SS病態発症へのマクロファージの重要性を議論するには、抗F4/80抗体投与やCD11bノックアウトマウスのような全身性のマクロファージ枯渇ではなく、唾液腺特異的なマクロファージ枯渇が最善の結果を示すと思われる。そこで当該マクロファージに貪食能がある場合は、貪食されるとマクロファージ内で毒性を発揮するクロドロン酸リポゾームを舌下小丘から投与する方法を試作しようと考えている。クロドロン酸投与後の唾液腺マクロファージの減少を腹腔内投与による脾臓のマクロファージ減少と比較しながら、枯渇方法を確立させる。マクロファージを枯渇させる時期や量によって病態を制御できれば、マクロファージの病態発症への重要性を確立するだけではなく、治療法への応用が可能になると期待している。
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