研究課題/領域番号 |
16H05515
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田上 順次 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (50171567)
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研究分担者 |
二階堂 徹 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00251538)
池田 正臣 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20549927)
半場 秀典 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (90634006)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 根面う蝕 / フッ化ジアンミン銀 / マイクロCT / 人工口腔装置 / 微小引張接着試験 |
研究実績の概要 |
高齢者の根面う蝕の抑制にフッ化物洗口剤の有効性が報告されている。また、38%フッ化ジアンミン銀は、その高濃度フッ化物と銀との作用により、高齢者の根面う蝕の進行抑制への応用が期待されている。本研究では、フッ化物洗口剤に含まれるフッ化物濃度(450ppmF、900ppmF)の使用が、コンポジットレジン修復時の接着に及ぼす影響について検討した。その結果、450,900ppmFともに接着強さへの影響はないが、より高濃度(9000ppmF)のフッ化物塗布では接着の低下が認められた。象牙質表面のXAFS解析結果から低濃度ではフルオロアパタイトの形成が確認され、9000ppmFではフッ化カルシウムの析出が認められた。 38%フッ化ジアンミン銀の根面象牙質への塗布について、その脱灰抑制効果をマイクロCTで検討した。その結果、フッ化ジアンミン銀は高い脱灰抑制効果を示し、その効果は高濃度フッ化ナトリウム(9000ppmF)と同程度であった。またフッ化ジアンミン銀の抗菌性について検討するため、ウシ象牙質面にフッ化ジアンミン銀を塗布した後、人工口腔装置内でS. mutansによるバイオフィルムを形成させた。その結果、フッ化ジアンミン銀は象牙質面上へのバイオフィルムの付着を著しく抑制することがわかった。一方、フッ化ジアンミン銀による象牙質の変色が問題となる。我々は抗酸化作用を有するグルタチオンに着目し、フッ化ジアンミン銀と組み合わせることによる変色抑制への効果を検証した。ウシ象牙質に対して38%フッ化ジアンミン銀と20%グルタチオン混合溶液を塗布したところ、象牙質の経時的変色は認められるもののグルタチオン混合によって変色の程度を低下できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分担研究者である二階堂徹は、東京医科歯科大学を退職し、朝日大学歯学部に在籍中であるが、東京医科歯科大学の非常勤講師として研究を行う。そのため、研究体制の見直しを行い、月2-3日程度研究遂行、指導、打ち合わせのために東京医科歯科大学を訪問する予定である。研究計画は概ね予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
38%フッ化ジアンミン銀の根面う蝕の抑制効果については、フッ化物による歯質の脱灰抑制および再石灰化効果が明らかとなった。また銀の効果としてバイオフィルム形成抑制や抗菌性の効果が明らかとなった。一方、サホライド塗布象牙質においては変色が問題となり、特に脱灰象牙質で変色が強いことがわかった。この変色の要因の一つとして銀の脱灰コラーゲンへの親和性の高さが挙げられる。そのためサホライドの特徴をう蝕治療に応用するのが今後の研究を推進していくための方策である。 ウシ歯に対して既報(Joves GJ et al., Dent Mater J, 2013)に準じて人工う蝕モデルを作製し、この人工う蝕象牙質に対して38%フッ化ジアンミン銀を塗布して黒変を確認する。この黒変部を除去し、除去後の象牙質表層から深層部における特性についてSEMとマイクロCT、微小硬さ試験を用いて解析する。一方、臨床で一般に使用されているう蝕検知液を用いて人工う蝕象牙質に対して染色法を用いてう蝕部分を除去し、同様に解析し、前者と比較検討する。さらにう蝕除去後の象牙質に対して各種ボンディングシステムを用いて接着させ、微小引張接着試験により接着性能を評価する。また、う蝕除去面に対する抗菌性について人工口腔装置を用いてバイオフィルムを形成させ、さらにLive/Dead観察を行い、検討する。これにより根面う蝕のサホライド塗布による変色を応用した新しいう蝕検知法およびコンポジットレジン修復技法の妥当性について検証する。
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