研究課題/領域番号 |
16H05516
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉羽 邦彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (30220718)
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研究分担者 |
吉羽 永子 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (10323974)
大倉 直人 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (00547573)
細矢 明宏 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (70350824)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 歯髄 / 創傷治癒 / 象牙芽細胞 / ケイ酸カルシウム系セメント / prostaglandin E2 |
研究実績の概要 |
象牙質・歯髄複合体の創傷治癒,修復・再生機構ならびにその過程における幹細胞/前駆細胞の局在および動態は不明である。本研究は,歯髄創傷治癒,修復・再生過程における,創傷部位への細胞,特に間葉系幹細胞の遊走・集積のメカニズム,ならびに新生象牙芽細胞の分化と硬組織形成機構の解明を目的とし,より有効な歯髄保存・再生療法の開発を目指そうとするものである。本研究の一環として実施された実験結果の概要は以下のとおりである。 1.覆髄材として近年注目されているMineral trioxide aggregate (MTA)等,ケイ酸カルシウム系セメントの組織内での挙動を明らかにする目的で,ラット皮下移植後の材料-組織界面部を,EPMAを用いて元素分析を行った。移植体表面にCaとPを含むアパタイト様析出物の生成が観察された。また,周囲結合組織内にもCa-P高濃度層が観察されたが,材料の剤型によりその厚みに差が認められた。本材の生体機能性とバイオミネラリゼーション能力が確認されるとともに,歯髄創傷治癒への剤型の影響が示唆された。 2.歯髄修復過程におけるprostaglandin E2(PGE2)の役割を明らかにする目的で,ラット臼歯MTA断髄処置後のトランスポーター(Pgt)および受容体(Ep2およびEp4)の局在ならびにmRNA発現を観察した。Ep2発現は,正常歯髄組織および断髄処置後の象牙芽細胞,内皮細胞,ならびに神経線維に認められたが,PgtおよびEp4は象牙芽細胞にのみ免疫局在が観察された。さらに,MTA断髄後の歯髄および三叉神経節では,Slco2a1 (encoding Pgt),Ptger2 (encoding Ep2),およびPtger4 (encoding Ep4)のmRNA発現が有意に上昇した。これらの結果から,象牙質・歯髄複合体の治癒過程におけるPGE2のPgtおよびEp受容体を介した機能が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
覆髄材として近年注目されているケイ酸カルシウム系セメントの生体内での挙動に着目し、歯髄創傷治癒へ影響を及ぼすと考えられる生体機能性とバイオミネラリゼーション能力について検討を行った。また、prostaglandin E2の歯髄創傷治癒における役割も明らかにされたが、創傷部位への細胞遊走・集積と細胞分化メカニズムとの関連性についての検討は十分進んでいないため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
直接覆髄(断髄)処置後の各種細胞の動態と硬組織形成過程の観察を引き続き実施するとともに、これらに関連する細胞誘導・分化決定因子の検索を進める。これらを歯髄細胞あるいは歯髄組織培養系に応用、各細胞の動態について解析し、細胞の誘導・分化に対する効果について検討する(in vitro)。さらに、効果の認められた因子について直接覆髄剤として応用し(in vivo)、その有効性を検証する予定である。
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