研究課題/領域番号 |
16H05531
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
山下 仁大 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 教授 (70174670)
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研究分担者 |
中村 美穂 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 非常勤講師 (40401385)
堀内 尚紘 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (90598195) [辞退]
永井 亜希子 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (40360599)
野崎 浩佑 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (00507767)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | エレクトレット / バイオセラミックス / 表面電荷 / 電気分極 |
研究実績の概要 |
再生医療の進展は医療においても学術的にも大いに期待されているが,臨床現場に供されるまでには克服すべき難題は多い.再生医療には細胞と生体物質の利用に加え,細胞の接着・増殖・分化を補助する優れた足場材料(スキャホールド)の開発が不可欠である.整形外科や歯科口腔外科領域においては,大規模欠損を再生させるため,既存材料の一層の機能強化と開発が強く望まれている.本研究においては,物理的あるいは化学的,生物学的作用力により材料自ら細胞の挙動を制御しうる材料主導型再生医療の推進を目的とし,その基盤となりうる普遍的理論と応用手法の構築を目指す.既に着手している骨系細胞から血管内皮細胞や神経細胞に対し,材料に導入した表面電荷により形成される局所電場による細胞遊走や増殖亢進効果などのナノバイオインターフェイス解析に基づく表面改質理論と手法を確立する.次に最新の研究において見出した共培養系での材料の作用力による異種細胞間のカスケード的シグナル伝達の促進や,幹細胞と肉腫細胞周期の制御などの画期的効果の理論構築と実用性の検証を行い,さらには臨床の視点も加味しながら,上述の種々の作用力を潜在的に有し再生医療に資する材料の開発と応用を目的とする.本研究では,バイオインターフェイスの創生する周辺環境の方法として,それを三次元的に制御されることが期待できる表面電荷誘起に着目し,ハイドロキシアパタイトセラミックス,生体吸 性を有する炭酸アパタイトやβ-リン酸三カルシウム(βTCP),またバイオガラスをポーリング処理することによってバイオエレクトレットを作製してきた.今後はセラミックエレクトレット上で接触角測定による表面エネルギー測定および,細胞培養を行い,その細胞接着形態を観察し,表面電荷誘起のためのポーリング 理条件についての知見を蓄積していく.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目に当たる平成29年度にはスキャホールド応用を勘案した材料科学的アプローチとして,塊状ポーラス体,顆粒及び微粒子,薄膜と種々の形態のエレクトレットを作製・加工を行った.3年目の平成30年度では,有機酸をテンプレートとしたナノ粒子合成を起点とする積層薄膜の合成法に成功した.ハイドロキシアパタイトを種々の有機酸を用いて水熱合成を行うことにより,ab軸方向とc軸方向の結晶成長を制御することが可能であり,カバーガラスにコーティングを行ったところ,ab軸方向が多く露出したハイドロキシアパタイト薄膜の開発に成功した.薄膜試料は新規スキャホールドとしての応用のみならず,ナノレベルでのバイオ界面の基礎現象を解析する上で重要である.また,有機酸およびポリペプチドを用いてダブルディフュージョン法による炭酸カルシウムの結晶成長の制御を試みた.その結果,ポリペプチドを用いたところ内部に気孔を有する階層構造を持つ球状のカルサイト結晶を得た.このような構造のカルサイトは,内部に種々の薬剤や機能性物質を内在させることが可能であり,今後応用研究へと発展させることが可能となる.また,我々はβ型リン酸三カルシウム(β-TCP)のエレクトレットの作製とそのメカニズムを明らかにするために,種々の濃度のナトリウムイオンを固溶したβ-TCPを作製した.その結果,β-TCPのエレクトレットは結晶構造中のカルシウム欠損を起点に生じていることが明らかとなった.β-TCPは骨補填材として幅広く利用されており,エレクトレット化により,骨形成を促進する骨補填材の開発が可能になると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
エレクトレットでは表面に誘起された電荷が体温を含む常温域で安定に存在し,これに起因する電場,すなわち静電気力を周辺に発する.本研究ではその力を体内において組織及び細胞挙動の制御に利用し,バイオ界面をナノレベルでマニピュレートすることを総目的としている.これまでの研究期間において種々の形態のバイオセラミックスのエレクトレット化に成功し,細胞培養実験により生体安全性のみならず,種々の細胞に働きかけることのできる報告例のない新機能性スキャホールドの作製の糸口を見出してきた. 今後はエレクトレットとしてバイオ及び電気的機能を発揮しうる効率の最適化条件を確立していく.またエレクトレット機能の寿命をシミュレーションと合わせ実験的に明らかにしていく.具体的に取りうる手法としては,バイオセラミックスの作製条件の最適化(温度と水蒸気存在の効果),ポーリング条件の最適化(電圧と温度,印可時間など),劣化実験による寿命の予測と劣化原因の解明,を予定している.また,生体由来のセラミックスの高機能化を試み,その骨形成能を評価することを予定している.
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