研究課題
本研究では、歯肉線維芽細胞をはじめとした間葉系細胞の各機能の発現に重要な受容体あるいはシグナル伝達分子の細胞内局在を制御する分子のうち、ゾレドロン酸(ZA)によりその機能が阻害される細胞内輸送分子としてaddicsinをモデル分子として研究を進めている。このaddicsinの間葉系細胞における細胞内動態を可視化する目的で、抗addicsinポリクローナル抗体を用いて免疫蛍光法による観察を実施した。興味深いことに、これまで神経系細胞におけるaddicsinの発現は小胞体や細胞膜あるいは細胞質基質で認められているが、未分化間葉系細胞では核内に限局した発現が認められた。このように、本抗addicsinポリクローナル抗体を利用して未分化間葉系細胞におけるこの分子の細胞内動態が観察可能であることを確認した。また、addicsinの全長を発現するタグ付きベクターを未分化間葉系細胞に発現し、抗タグ抗体を利用してベクターから発現されたaddicsin分子についてもその細胞内局在について確認中である。現在、addicsinの機能制御分子の同定を目指して、addicsin全長を発現するタグ付きベクターに結合するタンパク質を同定すべく研究を進めているが、ベクターから発現されるaddicsin分子の局在が核に限局されることが確認できれば、今後は核タンパク質に限定した同定作業を進める予定としている。このように、細胞内輸送分子addicsinの機能制御分子の同定作業の効率化を図りつつ、ZAにて阻害作用を受ける細胞内輸送分子の機能制御分子の同定作業を継続して実施している。
2: おおむね順調に進展している
研究実績の概要で述べたように、ZAに影響を受けるaddicsinの機能制御分子を同定するための計画はほぼ順調に進行している。しかしながら、口腔由来血管内皮細胞前駆細胞(EPC)の血管形成能力に関わるシグナル伝達分子のうちで、ZAがその機能を抑制する分子の同定作業が若干であるが遅延している。
これまでに実施している細胞内輸送分子addicsinの機能制御分子や口腔由来EPCの血管形成能力に関わるシグナル伝達分子のうちで、ZAがその機能を抑制する分子の同定作業を早期に完結させる。その後、特定された抜歯窩炎症の遷延化や顎骨壊死の病因となるZAの標的分子の強発現ベクターをBRONJマウス抜歯窩周辺組織に強制発現させ、症状の寛解を組織学的に確認する。また、赤色蛍光tdTomatoを全身で強発現するTGマウス骨髄より強赤色蛍光発現未分化間葉系細胞を採取し、遺伝子導入後のBRONJマウスに尾静脈より注入する。注入後の未分化間葉系細胞を蛍光トレースして抜歯窩周辺へのホーミングを確認すると共に、注入した未分化間葉系細胞による抜歯窩周辺組織の再生の様子を組織学的に確認する。加えて、ZAの標的分子に対するZA作用部位を特定し、作用部分のペプチドを投与した場合にBRONJの症状が抑えられるかどうかを調査したい。
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