口蓋裂は、最も頻度の高いヒトの先天異常であるため、多くの患者が存在する。その病因については複雑さゆえに大きな進展はなく、環境因子と遺伝因子の議論に止まって久しい。口蓋裂に対する臨床的な将来像は、生前における口蓋裂診断と、投薬による生前での治療にあるが、そのために必要な口蓋の正常な形成における分子レベルでの制御メカニズムが明らかとなっていない。口蓋裂は、一次口蓋と二次口蓋の間の口蓋裂 (primary cleft palate)と、二次口蓋における口蓋裂(secondary cleft palate)に大別される。primary cleft palateとsecondary cleft palateが同じメカニズムで生じているかは不明である。近交系マウスであるCL/Fr 系統マウスは、primary cleft palate とsecondary cleft palateの両方を有するマウスが存在する。そこで、両方の口蓋裂タイプを有するCL/Fr 系統マウスを用いて、primary cleft palate とsecondary cleft palateに分子レベルでの違いが存在するか解析したところ、primary cleft palateでは、ShhとWntのシグナルの低下が確認されたが、secondary cleft palate領域では、それらのシグナルに変化は認められなかった。以上のことより、primary cleft palateとsecondary cleft palateは、別々のメカニズムでひき起こる可能性があることが示唆された。
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