研究課題/領域番号 |
16H05540
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
日比 英晴 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90345885)
|
研究分担者 |
黒田 健介 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 准教授 (00283408)
土屋 周平 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20569785)
興戸 正純 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (50126843)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 移植・再生医療 / 再生医学 |
研究実績の概要 |
本研究の全体構想は,過酷な環境下で幹細胞を培養し,その上清中因子群を適用することにより,大量の骨再生を可能にし,顎骨区域欠損の再建を,さらにその製剤化も目指すことであった.そのために本研究の目的は,細胞は環境に反応して自己生存に有利な因子群を放出することを利用して,組織欠損部の環境を調整し,組織を再生させるのに最適な細胞由来因子群を得るための培養条件と,生体内で実際に組織再生を誘導するのに最適な投与方法を求めることであった. 本年度は上清中因子群の局所投与法,徐放性担体による静的投与法について検討した.幹細胞培養上清の調製とその機能解析の手法はそれを扱ったわれわれの既報に準じた.所定の手続きを経て得た間葉系幹細胞を培養して上清を調製した.培養条件は酸素分圧,栄養,pH,機械的ストレスについて,生体にとって過酷な環境,組織破壊が起きる環境を想定して設定した.培養終了後,無血清培地でさらに48時間培養し,それを遠心分離することによりその上清を得た.培養上清の組成を明らかにするために,その中に含まれるタンパク質をマススペクトロメトリーにより網羅的に解析して同定し,その機能面からさらに種類を絞ってELISAで発現を確認し定量した.またその遺伝子発現について,RNAを抽出しリアルタイムRT-PCRにて解析した.培養上清の組成を模した成長因子の混合物が骨再生に有効であることを示し,製剤化への手がかりをつかんだ.また培養上清の担体としてコラーゲン,リン酸カルシウムなどの承認済み材料のほか,プラズマにより表面加工処理を施したチタンを用いた.この表面処理法をチタンプレートおよびメッシュに施すことで,また上記の材料と組み合わせることで,これらが顎骨区域欠損部でも骨形成を期待し得る再建材料となることを検討している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までに検討した幹細胞培養上清の調製条件や生体内適用条件を補完できるように項目を設定し,既報で示したデータを活かすことができたため,効率的に研究を進めることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
動物頭蓋骨欠損モデルに培養上清を含む担体を適用して,形成された組織を組織学的,X線学的に,また多重免疫組織化学法にて評価する.細胞動態は,体外で蛍光標識した細胞を体内に導入し,組織再生の場に遊走する様相をインビボイメージングシステムにより評価する.さらに再生組織における血管網構築について血流画像解析装置で評価する. 上清中因子群の局所投与法について,量的時間的制御下動的投与法を検討する.徐放性担体ではその放出制御に限界がある.そこで培養上清あるいはその含有因子群をシリンジで投与することを検討する.これにより量と時間や注入位置だけでなく,内容も任意に設定できる.この結果から至適な投与条件と方法が決定できればマイクロポンプを用いた準閉鎖系の適用法を試みる.
|