研究課題
細胞を用いた再生医療では,移植細胞の生存率が低い問題が報告されているが,その原因については十分明らかになっていない.移植細胞の生存率が低いために,治療に必要とされる細胞数は大量にならざるを得ないが,その結果として細胞調製に必要な期間や費用は増大し,細胞治療の効率性が著しく損なわれてしまう.われわれは,これまで免疫正常動物を用いた骨再生モデルの実験から,移植部位におけるサイトカインの発現を解析してきた.しかしながら,それらのサイトカインが移植細胞に与える影響や,その影響を回避する方法については明かではなかった.本研究では,抗炎症剤として術後に投与される副腎皮質ホルモンを用いて,局所の炎症の制御の可能性と,移植細胞に与える影響を検討した.その結果,3回のステロイド投与が移植部位におけるサイトカインのプロファイルを変え,移植細胞の生存数を増加させることを示した.一方,7日間の連続投与では,投与期間の短さにかかわらず移植細胞のアポトーシスを増加させ,さらに破骨細胞の分化も誘導することが明らかになった.これらの結果から,ステロイド投与による局所の炎症制御は可能であるものの,ごく短い期間の投与であっても過剰な投与となる可能性があり,結果として再生骨量の減少につながることが示唆された.また,移植部位によるサイトカインの発現は,移植細胞の生存のみでなく,破骨細胞の誘導にも関与する可能性がある.次に移植部位に見られるサイトカインが骨芽細胞に与える影響をin vitroの実験系を用いて検討した.その結果,一部の炎症性サイトカインは骨芽細胞の細胞死を誘導するのみでなく,骨芽細胞の骨分化を抑制することを明らかとした.この結果をを利用することで,移植細胞の生存率の向上や機能改善のための新たな治療法の開発が可能になると考えられ,再生医療の費用の軽減や治療期間の短縮に貢献することが期待される.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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