研究課題/領域番号 |
16H05554
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
中島 貴子 新潟大学, 医歯学系, 講師 (40303143)
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研究分担者 |
山崎 和久 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00182478)
森田 英利 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (70257294)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯周病 / 腸内細菌 / マイクロバイオーム / メタゲノム |
研究実績の概要 |
本研究は、歯周病原細菌によって誘導される腸内細菌叢の変動と、付随する腸管透過性の亢進による内毒素血症が、歯周病と糖尿病、動脈硬化性疾患などの全身疾患との関連メカニズムである、という仮説のヒトでの証明を目指す。主要目的は、ヒト歯周炎患者の口腔内細菌叢と腸内細菌叢を、健康対照者と、あるいは歯周治療前後で比較することである。第二の目的は、口腔内から飲み込んだ歯周病原細菌が腸内環境に及ぼす影響を詳細に検討するために、ヒト歯周炎患者口腔内細菌を無菌マウスに投与し、歯周組織と腸管での反応を検討することである。 これまでに、ヒト歯周炎患者20名と健常者15名程度ずつから唾液と糞便試料を採取し、16SrRNA遺伝子メタゲノム解析を行った。歯周炎患者の唾液細菌叢と腸内細菌叢は主座標分析(PCA)結果から、いずれも健常者とは異なっていること、歯周炎患者の方が健常者よりも口腔内細菌の多様性が高いことが明らかとなってきた。治療前後の比較において、治療後には唾液細菌叢および腸内細菌叢のいずれも、健常者群との差異が消失するという結果を得ている。中間データを2018年5月に日本歯周病学会学術大会にて発表した。 無菌マウスへのヒト歯周病原細菌Porphyromonas gingivalis口腔投与実験を実施した。我々が先に報告しているSPFマウスへの投与時の結果と異なり、歯肉の炎症性変化、歯槽骨吸収、腸管と肝臓の炎症性変化やTh17、Tregの増加は認められなかった。腸管リンパ節細胞からのIL-6とIL-17の産生上昇と歯肉におけるIL-10産生の上昇、腸管におけるタイトジャンクションタンパクの発現低下を認めた。以上より、歯周病原細菌の全身への影響は、腸内細菌が存在することが必須であり、腸内細菌叢を変化させる何らかの間接的なメカニズムが存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト歯周炎患者、健常者の研究へのリクルート状況はやや遅れているが、目標の30症例の約半数に達し、解析結果に傾向がはっきりと表れているので、研究仮説を検証するために必要なデータ量を集められる目途がたってきている。さらに患者リクルートを進めるために、新潟大学病院だけでなく、開業歯科医院に研究協力を求め、倫理委員会審査を経てそれらの医院からの被験者リクルートも開始した。 マウスの実験については、実際のヒトから採取した唾液細菌の投与は感染コントロール上の理由で実施していないが、歯周病原細菌Porphyromonas gingivalisと、対照として口腔内常在細菌Lactobacillus salivariusの無菌マウス投与実験の実施、試料解析を終了し、論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、ヒト被験者リクルートを加速して目標症例数を達成する。そのために、新たな研究協力施設として東京歯科大学を加える。得られたヒト唾液、糞便試料は、これまで通り16SrRNAメタゲノム解析により、マイクロバイオーム解析を行うとともに、そのデータを利用してソフトウェア上でのメタボローム解析を実施して、口腔細菌叢がどのように腸内細菌叢に影響を及ぼしているかのメカニズム解明をめざす。 無菌マウスへの歯周病原細菌投与実験については再現性を確認していくとともに、SPFマウスへ複数の歯周病原細菌、口腔常在菌を組み合わせて投与する実験系を組み、腸内細菌叢のマイクロバイオーム解析、メタボローム解析を行い、ヒトデータの裏付けを行う。
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