研究課題/領域番号 |
16H05567
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研究機関 | 関西福祉大学 |
研究代表者 |
掛田 崇寛 関西福祉大学, 看護学部, 教授 (60403664)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 痛み / 痛覚反応 / 情動 / 介入研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、健康成人を対象に看護ケアによってもたらされる痛みに対する鎮痛効果について解明することである。また、看護ケアによる鎮痛効果の発現にはケア実施によってもたらされる「心地よい」と評される快情動が痛覚抑制に寄与していると仮説立てている。平成28年度は、まず関連のある痛覚研究の文献抄読を行うとともに、仮説検証を行っていく上で研究指標の選定を実施した。具体的には、痛覚反応を多面的に捉えるために、動脈の脈波指標及び心電図と連続血圧から得られるデータを基に得られる自律神経系活動指標、唾液中に含有する急性ストレス指標を新たな身体的な客観指標として選定作業を行い、本研究に採用していく計画をした。これに加えて、刻々と変化する対象者の情動を捉えるための心理テストによる精神的指標の選定や、痛みが日常生活動作に及ぼす行動的指標についても検討した。また、痛みを感じる対象者の情動がポジティブな状態下では痛みを感じにくく、また主観的評価についても低下することを予備検討で示唆を得た。逆に、ネガティブな情動状態下では同一の痛覚刺激であっても痛みを強く感じるデータも得られていることから、痛みに対する情動調節の重要性について研究の方向性が立った。また、看護ケアによる痛みに対する効果は痛覚伝導に直接的に作用する機序を有さないために、同一の対象者であっても効果発現に至る場合と、そうでない場合がある。本研究では、こうした看護ケアによる鎮痛機序を対象者の情動が鎮痛効果発現のトリガーになると仮説立てた上で、ケアによる緩和効果を得るためには看護職が対象者の情動調節することで結果的に痛みの増強や悪化を抑止できると予測している。次年度以降は本格的に研究展開していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の指標選定については研究結果に大きく影響を及ぼすことから諸文献での結果も含めて慎重に検討を行ってきた。また、鎮痛を目的とした看護ケアによる効果の発現にはケア実施によって対象者にもたらされる「心地よい」と評される快情動が寄与していることを念頭に予備検討も行った。さらに、対象者の情動をポジティブな状態へ誘導することが、ケアの効果を高め、逆にネガティブな状態下での同一の痛覚刺激であっても痛みを強く受容する可能性があることの示唆も得た。次年度に関しては本格的に研究を進めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は本格的に研究を進めていくとともに、収集データから得られるさらなる示唆を基に脳科学的な検証及び新たな研究手法も検討しながら研究展開していく。また、本研究仮説の中心的部分である、看護ケアの効果が快・不快の情動状態でいかに痛覚受容へ影響を及ぼすのかを明らかにしていく。看護職が痛みを感じる対象者の情動を的確に捉えて、且つ情動を調節することで痛みからの解放と安寧をもたらすことを検証していく。
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