|
本研究の目的は成人男女を対象に、看護ケアによってもたらされる痛みに対する鎮痛効果を科学的に解明することであった。看護ケアによる抗侵害受容効果は痛覚の伝達を直接抑止するのではなく、痛みを受容する対象者の情動がこれに関与すると仮設立てて研究を実施した。臨床においては鎮痛を目的とした痛みに対する看護ケアは同一のケア及び同一の対象であっても効果の発現は定常ではなく、痛みへ及ぼす影響は一定ではない。そのため、本研究では看護ケアによる痛みへの効果をケアそのものだけでなく、痛みを感じる対象者及びその情動にも着目して検討を行った。その結果、ケアによってもたらされる「心地よい」と感じられるポジティブな快情動が誘導できればできるほど、痛覚受容が抑制させることを示唆することが明らかになった。すなわち、本研究結果は鎮痛を目的とした看護ケアの効果を誘導する際は、単にケアとしての技術的側面に着目するだけでなく、痛みを感じる対象者の情動にも目を向ける必要があることを示している。つまり、そうした対象者の情動を意図的に肯定的に誘導することが、痛みの悪化を防ぐとともに、効果的な疼痛管理に寄与することを示すものである。
|
