今年度は、研究最終年度であり、今までの開発や研究成果を踏まえた実証実験を中心に行った。2018年高知県で行われた災害医療訓練においては、D‐STARを利用した災害情報通信を行った。避難所で集めた情報を本部の高知県庁まで約2.5Kmの間で、音声以外にテキスト(一般的伝達文、J-SPEEDデータ、避難所の環境情報)、画像データ(医療用超音波画像、心電図画像、避難所の環境を伝える写真画像、ホワイトボードに書かれた情報を写真画像にしたもの)を伝送した。非常に簡便な装置でこれらが実用レベルで実現出来たが、課題も残された。一つは、近距離の通信であったが、地形の影響により当初全く通信が出来ないという事態が生じた。これに対して、電波伝搬シュミレーションを行うことで問題を克服できた。そもそも、災害時にこのようなシステムを利用しようとした場合は、どのような場所で利用するか予め準備しておくことが出来ないこともあるため、シュミレーションソフトを併用することは必須であると考えられた。一度、通信経路が確認できれば、その後は安定して通信を行うことが出来た。特に、テキストデータ伝送については大変に有益であることがわかった。特に、今後災害医療を展開する上で重要な要素となる、J-SPEED(Japan-Surveillance in Post Extreme Emergencies and Disasters )によるレポーティングは、音声通信だけでは到底送ることは困難であり、テキストデータで送信できたことは、通信インフラが完全に破壊された災害医療のにおいて、有力なツールとなる。ただし、現状ではファイルデータを扱えず不便なため、ファイル伝送のソフトウエアを現在プロトタイプであるが開発した。今後改良を重ね、実用を目指している。また、副次的な研究で、医療で求められる皮膚色を正確に伝送するための基礎研究も行なえた。
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