研究実績の概要 |
本年度は、薬物療法をうける進行・再発大腸がん患者のストレスと折り合いをつける力(Mastery:マステリ)とその関連要因を明らかにし、看護介入への示唆を得ることを目的とした。5施設の研究協力者を通じて質問紙を配布し、76名の回答を得た。対象者は男性50名、女性26名からなり、平均年齢は66.6±8.5歳であった。最初の診断から平均14.3ヶ月で再発・転移の診断を受け薬物療法が開始となっていた。マステリの得点は外来がん患者を対象に調査された先行研究とほぼ同等であった。単回帰分析およびt検定を行った結果、がん患者のストレスに影響を及ぼしていたのは、①再発転移後の治療期間の長さ(β=0.36, p=0.04)、②病気に伴う症状の強さ(β=0.41, p=0.00)、③就業していないこと(t(74)=2.4,p=0.01)、④経済状態の悪さ(F(2,73)=6.1,p=0.00)であった。またストレス状態の高さはマステリの受け入れ因子に負の影響を与えていた(β=-0.34, p=0.00)。さらにソーシャルサポートがマステリの拡がり(β=0.29, p=0.11)・変更(β=0.46, p=0.00)・確かさ(β=0.44, p=0.00)・受け入れ(β=0.36, p=0.00)因子にそれぞれ正の影響を与えていた。初発診断から1年程度という短期間で再発・転移し、その後長期にわたり薬物治療を受ける患者に対し、薬物療法に伴う症状のマネジメントを十分に行うこと、加えて、経済・就労支援に関する情報提供、気持ちのマネジメントの促進、ソーシャルサポートのアセスメント、ソーシャルモデルでの支援が求められることが示唆された。
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