研究課題/領域番号 |
16H05579
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
長松 康子 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (80286707)
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研究分担者 |
本城 由美 (佐居由美) 聖路加国際大学, 大学院看護学研究科, 准教授 (10297070)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アスベスト / 中皮腫 / 教育 / ガイドライン / QOL |
研究実績の概要 |
前年度に実施した遺族に対する調査により、胸膜中皮腫患者はターミナル期のQOLが著しく阻害されていることと、悲嘆からの回復が長引く遺族が多いことが分かった。そこで、胸膜中皮腫患者の家族と遺族に対して支援を行っている英国の支援団体を訪ね、支援策について情報収集を行った。英国では胸膜中皮腫と診断されると、肺がん・中皮腫ナースが割り当てられ、患者と家族のケアを一貫して行う。また、今回訪問した地域の中皮腫患者支援グループは、患者・家族への情報提供、心理的支援を行うほか、患者や家族自身が主体となって社会へ向けてアスベスト疾患撲滅活動を行っている。肺がん・中皮腫ナースと中皮腫患者支援団体は連携して活動を行っており、診断から治療選択、増悪、死亡、グリーフまで、患者・家族・遺族が最も必要な支援を迅速にが受けられるよう互いに働きあっている。中皮腫患者遺族に対するグリーフケアも実施されており、毎年7月6日のAction Mesothelioma Dayには遺族も多く参加する。遺族は支援されることもあれば、患者、家族、ほかの遺族を支援することで自身もエンパワーさあれることもある。重要なことは、様々なケアニーズを持つ中皮腫患者・家族・遺族にあったケアや活動の場を持つことである。 そのほかに、英国では、病院、ホスピス、その他NGOなどでグリーフケアが行われている。訪問したMaggie's Cancer Centerでは、開かれたケアの一環として、希望者に対してグリーフケアを実施ししている。 前年度に実施した胸膜中皮腫患者の遺族に対して行った患者と家族のQOLに関する調査結果は、投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの研究により、胸膜中皮腫患者とその家族および遺族を支援するためのケア開発が必要であることが明らかになったが、それらをケアガイドラインに反映するためのエビデンスの整理が十分行えなかった。特に本研究が示した患者・家族の被害感情に対するケアや遺族のグリーフケアについての文献が見つからなかった。そこで、文献レビューだけでなく、今後は中皮腫患者・家族・遺族のケアを行うナースや医療従事者に対してデルファイ法を用いたケアガイド開発を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
United Nations Environment Programme (UNEP), World Health Organization (WHO), International Labor Organization (ILO), International Agency for Research on Cancer (IARC), などの国連機関とAsbestos Diseases Research Institute(アスベスト疾患研究所)とのパートナシップにより、政府職員向けアスベスト疾患撲滅プログラムが、フィリピン、タイ、ジンバブエの3国で実施されることになり、本研究成果をもとに看護職としてアスベスト疾患ケアを担当することになった。今年度は7月にフィリピンで、12月にタイでプログラムを実施する。
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