研究実績の概要 |
他の研究班の調査によって、胸膜中皮腫患者のQOLが阻害されており、特に病期が進行して重症度が増すほどQOLが低下することが明らかになった。そこで本研究班は、自宅療養期における胸膜中皮腫患者のケアが重要と考え、中皮腫ケア先進国である英国に視察を行った 。英国では、ケアガイドラインによって治療とケアが決められており、全ての胸膜中皮腫患者に肺がんまたは中皮腫ナースが配されて、療養の場が変わっても継続してケアコーディネーションを行っていた。その結果、多くの胸膜中皮腫患者が在宅で過ごし、高いQOLを維持していた。 先行研究では、ターミナル期の胸膜中皮腫患者のQOLについては不明な点が多かったことから、本研究班は胸膜中皮腫患者遺族に対して、Good death Inventory を用いた患者の望ましい死の達成度とBrief Grief Quersitionareを用いた遺族の複雑性悲嘆について調査を実施した。その結果、他のがんに比べて、胸膜中皮腫 患者はターミナル期の身体的症状が顕著であることがわかった。また、発症からの生存期間が長く、患者が不安に対するケアを受け、快適な病室で過ごし、悪化した時のケアに遺族が満足すると、遺族からみた患者の望ましい死達成度が高かった。 また、胸膜中皮腫患者遺族の15.3%が複雑性悲嘆の可能性が高く,複雑性悲嘆の可能性があるものを含めると73.2%に上った。遺族の複雑性悲嘆得点は、患者の望まし死達達成、石綿健康被害救済未補償、患者が増悪時のケアに不満足、手術を受けた患者遺族であった。 発症からお看取り後までのケアを向上させるために、看護師が主体となってケアをコーディネートする「胸膜中皮腫包括ケアABCガイド」を開発した。
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