研究課題/領域番号 |
16H05582
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研究機関 | 日本赤十字看護大学 |
研究代表者 |
守田 美奈子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (50288065)
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研究分担者 |
本庄 恵子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (70318872)
吉田 みつ子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 准教授 (80308288)
田中 孝美 日本赤十字看護大学, 看護学部, 准教授 (60336716)
樋口 佳栄 日本赤十字看護大学, 看護学部, 講師 (00460098)
中村 光江 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 教授 (80381466)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ACP / 多職種連携 / 日本型 / 文化 / 意思決定支援 / 家族 / 死 |
研究実績の概要 |
H28年度は、右記の(1)から(3)の目標に即して研究活動を行った。(1)国内及び英米におけるACPに関する文献検討を行い、慢性疾患のACPのケアモデル作成における課題を明確にする。(2)海外のACPに関する実情へのヒアリング調査を行い支援課題を明確にする。(3)慢性疾患のACPの研究、実践をしている医師、看護師などを対象に実態調査を行い、心不全、呼吸不全、腎不全の疾患特性をふまえて、意思決定プロセスの支援及び支援ニーズの実態調査枠組み案を作成する。 (1)に関しては、ACPに関する文献調査を行った。ACP概念及び発生の歴史的経緯やACPを導入した実践報告、その成果などに関する文献を収集し検討した。海外ではACPを導入し、対象者の満足度が高まる等の研究成果が示されていた。しかし国内では総説が多く、特に慢性疾患に関しては、腎不全、呼吸不全、心不全の3領域ともに、終末期ケアや緩和ケアに関する研究が着手され始めた状況であり、ACPに関してはまだ十分な知見が示されていないことが明確になった。以上の検討を元に、現地調査の対象者(研究者、実践家)を抽出し、インタビュー調査に関する計画を立案した。倫理審査委員会の承認を経て、国内外のインタビュー調査を実施した。国内では、医師6名、看護師11名、理学療法士1名、事務職1名、合計19名にインタビューを行った。海外では、英国5箇所、豪州3箇所でインタビュー調査を行った。 これらをもとにACPの実践を形成する重要な要素の分析を行った。現在のところ、「話す時期とタイミング」「場の設定」「表現や話題の選択」「頻度」「記録」「共有方法」などを抽出している。実践上の課題として「ACPへの医療者の理解と意識」「時間」「場」「職種の連携」「法的基盤」などの課題が挙がっている。これらの関係を検討しケアモデル案の基盤を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度は、(1)文献検討、(2)国内外のインタビュー調査,(3)文献検討及びインタビュー調査を土台にケアモデル案の検討を行う、という3点の目標を立案した。文献検討やACPの研究者からの専門的助言を得るなどの研究活動を通して、国内外のACPの研究と実践の実態が把握できた。研究者、実践家へのインタビュー調査に関しては、それぞれの分野でACPに関心をもち先駆的な取り組みをしている医師、看護職、理学療法士などからの協力を得ることができ、予想以上の協力者数を得ることができた。海外調査に関しても、英国、豪州で実際にACPの実践や研究に携わっている専門家の話を聞くことができた。インタビューデータは分析途上である。海外調査結果では、例えば腎不全患者への治療選択に関する意思決定支援の具体的な方法、地域でのシステム等、非常に具体的な情報を得ることができた。ただし海外調査が3月となったため、国内外での調査結果の詳細な分析に関しては次年度課題となった。国内でのインタビューデータと照合しながら日本的な特徴を分析するという作業は、次年度の課題としている。しかし、国内調査と海外調査の結果から、ケアモデルを検討するためのデータは揃っているので、分析を進めることでケアモデル案の検討の段階に至っている。そのためH28年度の目標は概ね達成できていると考えている。研究組織も3領域での分担体制はスムーズに機能している。インタビューも協力体制をとりながら実施できているので、企画どおりに研究体制が機能しているので運営面でも順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度は、文献及びインタビューにより得られたデータを元に、ACPの実践課題を明確にするためのアンケート枠組みを作成し、アンケート調査を実施する計画である。この結果を、海外文献や調査結果と比較検討し、日本における実践課題を明確にし、ケアモデルの作成に至る計画である。上半期までにアンケート調査計画に関して本学倫理委員会の承認を得る計画で進めていく。3領域の慢性疾患の臨床実践に関わる専門家を対象にアンケートを行う予定である。その際、実践枠組みの検討を行い、ケアモデルの原型を検討する予定である。3領域の慢性疾患の実践、研究に関するインタビューデータの分析により、それぞれのケアモデルの特徴も明らかにしていく計画である。
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