研究課題/領域番号 |
16H05587
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
佐藤 珠美 佐賀大学, 医学部, 教授 (50274600)
|
研究分担者 |
大橋 一友 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30203897)
エレーラ ルルデス 日本赤十字九州国際看護大学, 看護学部, 准教授 (40597720)
園畑 素樹 佐賀大学, 医学部, 准教授 (50304895)
中河 亜希 佐賀大学, 医学部, 助教 (70453222)
大西 哲朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 医員 (70759927)
平田 仁 名古屋大学, 予防早期医療創成センター(医), 教授 (80173243)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 産後 / 腱鞘炎 / 縦断調査 / 上肢機能評価 / QOL / 自己検診 / 教育介入 |
研究実績の概要 |
1)前向き縦断調査では産後の手と手首痛、ドケルバン腱鞘炎の有病率、主訴と重症度等との関連の解明、そしてHand20とEPDS、EQ-5D-5Lとの関連を検討することを目的とした。対象は2016年8月~12月に2施設(診療所、総合病院)で出産した女性とした。調査は産後5日、2か月、6か月に行った。内容は手や手首の痛みの自覚、Hand20(上肢機能)、EPDS(うつ)、EQ-5D-5L(QOL)、他に分娩方法、児の状況、年齢、既往、家族構成等とした。統計解析はSPSSを用いた。所属大学及び協力施設の倫理委員会の承認を得て実施した。結果、産後5日は139名、2か月は134名、6か月は131名から回答を得た。このうち3回全てに協力が得られた131名を対象とした。手首痛の経験は妊娠中が6.9%、産後5日が12.2%、2か月が41.2%と増加し、6か月は24.4%に減少した。手と手首痛の関連要因は、産後5日は初経、分娩方法と妊娠中の痛みの有無であった。産後2か月は、初経、抱っこでの寝かしつけ、児ののけ反りであった。産後6か月の関連要因はあきらかにならず、抱っこや手首痛の既往など複合的要因が考えられた。Hand20が13.1以上を示した人は産後5日が9.9%、2か月が10.7%、6か月が12.2%と1割前後存在した。上肢機能障害ありの人は無しの人に比べ有意にQOLが低下していた。 2)自己検診と教育介入では育児期の母親と支援者を対象とした上肢機能評価(握力、ピンチ力、Hand20評価)、抱っこ時のからだの使い方評価と修正など介入方法を開発した。 3)在留外国人の調査では、調査票の翻訳、プレテストを行い、日本、中国、ペルーで乳児の母親を対象にHand20およびDASHを用いた横断調査を実施した。各国の手と手首痛の発症割合は20%前後であった。Hand20とDASHの相関も0.7程度と高かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1)日本人へのコホート調査の先行研究の結果により、産後の腱鞘炎の発症時期が、産後1か月から2か月に多いこと、6月頃では新たな発症者が出ることは少ないことが明らかになった。そこで、腱鞘炎の早期発見、介入支援の根拠を得るためには、縦断調査の時期を産後4か月から6か月まで、2か月間引き伸ばす必要性が生じ、調査期間を平成29年6月までに延長することとなった。 2)在留外国人の調査は、在留外国人を対象とすることでは、本研究の目的とする結果が得られないことが明らかになった。そこで、国内外での横断調査を行い乳児の母親の手と手首痛、上肢機能障害に影響を与える要因(特に育児行動、習慣など)を明らかにするために、日本、ペルー、中国で国際比較をすることにした。外国人調査では当初ポルトガル語圏(ブラジル)も予定し、調査票などの翻訳も進めたが、研究協力者であるブラジルの大学の倫理委員会で乳児の母親に調査するには、一般での腱鞘炎の調査の実施が条件とされ、本研究の目的と異なるため中止とした。
|
今後の研究の推進方策 |
1)前向き縦断調査の結果と平成30年6月に完了予定である情報提供後の縦断調査の結果と比較する。そして、産後腱鞘炎に関する情報提供が、腱鞘炎の発症や予防のための行動にどのような影響を与えるかを検討する。 2)自己検診法と教育介入のプログラムのWEB教材(日本語版、中国語版、スペイン語版)の配信の実証実験を行う。 3)日本、中国、ペルーの乳児の母親の手と手首痛の横断調査結果の比較検討を進め、学会で発表する。
|
備考 |
産後腱鞘炎の啓発と成果報告を目的として、ホームページを作成した。ホームページでは、研究の取り組みとその成果についてQ&A形式で報告した。さらに、介入で使用した教材やポスターを研究終了後公開するとともに、上肢機能障害に関するNPO法人ハンドフロンティア(共同研究者が管理)にリンクし、最新の上肢機能障害に関する情報を得たり、Hand20を用いた検診ができるようにした。
|