研究課題/領域番号 |
16H05596
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
河原 加代子 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (30249172)
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研究分担者 |
結城 美智子 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (20276661)
早野 貴美子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 医学教育部看護学科, 教授 (40759031)
習田 明裕 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (60315760)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 看護ケア技術 / 自律神経変動解析 / 横隔膜呼吸法 / 足浴法 / マッサージ法 / 相互作用 / 看護介入 / プログラム評価 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人間の呼吸、心拍、自律神経系などの生理的変化を測定し、可視化することにより、看護ケア(技術)の効果を確認、そのメカニズムを解明する。具体的には 1)「呼吸法」ケア開発の目的は、横隔膜呼吸運動の有用性を定量的に評価することである。評価は、①呼吸運動の前、中、後の自律神経活動指標の推移とパターン傾向、②被験者の特性(安静時の自律神経活動の傾向や精神的健康指標の傾向)と自律神経活動指標の推移とパターン傾向の定量的可視化である。結果として、上下肢の動きと連動した横隔膜呼吸運動は自律神経活動バランスの適正化に効果があることが確認された。 2)「足浴法」ケア開発の目的は、クリニックに来院する45歳から65歳の中高齢者を対象に看護師の介入による効果を縦断的に評価することである。結果として、被験者の足部への認識や生活習慣の変化、自己効力感の変化や、介入前・中・後の生理的変化と心理的変化を定量化する。結果として行動変容が認められた被験者は12名のうち半数であった。身体症状(歩行や動作、特に足部の疲労など)の改善傾向はほぼ全員に認められた。介入前後の自己効力感には有意差はなかった。 3)「マッサージ法」ケア開発の目的は、訪問看護師が行う地域住民を対象とした看護介入の効果を評価することである。結果として、約80名の地域住民の半数が慢性疾患を有し、マッサージ法によるリラクセーション効果が認められた。介入前・中・後の自律神経活動の変化は変化率で比較すると無介入群に比較し有意な効果を確認した。また被験者の属性との関連も明らかになり、開発したプログラムの一定の効果が確認された。 本プロジェクト工程の各段階で研究成果を報告し実績を開示しながらプロセスを進めた。平成29年度のプロジェクト会議は12回開催され、自律神経の変動解析を正確に行うための分析会議を繰り返し、新たな知見を国内外で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は3つの看護ケア技術の開発を目的としている。各ケア開発を担当する責任者が無理なく作業工程を進められるよう、進捗会議を継続的に開催したことで年間を通して研究成果を国内外に報告できた点は評価できる。研究成果は、国際学会(4件)、国内学会(3件)に報告した。また国内専門分野の雑誌の投稿1件の最終査読結果を終了し、H30年度9月掲載予定の論文が1件、国際学会誌への投稿準備中の論文2件をまとめることができた。 これらの工程を可能にしたのは、3つの実験機器がそろい、3つのケア測定が各臨床フィールドで同時に使えるようになったことである。限られた時間にデータ採取が可能となったことは研究を進める上でおおいに有効であった。 また、基礎研究から臨床研究に進む段階で必要となる研究倫理審査についてはかなりの準備時間を必要とするが、十分吟味したうえで被験者への説明、協力依頼を行っているため、質の高いデータ収集が可能となっていることもおおむね順調に進めることができた理由の1つである。 そして、H29年度に新たに加えた基礎実験では、歩行動作を伴う実験データを採取するため、動作時で測定可能な機器を購入した。予算執行の計画もほぼ予定どおりに実施できた点も評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では3つのケア開発が同時進行で進む。最終年度はこれら3つのケアの実践フィールドでの有用性を確認する工程を中心に最終報告書をまとめる計画となっている。すでに臨床フィールドで評価研究を継続している「横隔膜呼吸法」「足浴法」「マッサージ法」はデータ解析を深め、国内外の発表と論文発表を行う。そのため定例の分析会議を中心に研究成果をまとめるとともに、「歩行動作を伴う呼吸法」の基礎実験を進めていく必要がある。歩行」動作を伴う自律神経系の活動を評価する基礎実験を継続する。この実験では、「歩行」と「呼吸」を組合せた実験を計画している。最終年度のプロジェクト工程は各ケア開発の進捗状況のモニタリングと必要時修正を細やかなレベルで実施することが特に重要と考える。プロジェクトメンバー間の情報共有と意見交換を密にして作業工程を進める計画である。
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