平成23年3月11日に発生した東日本大震災および福島第一原子力発電所事故は日本中のあらゆる地域と人々へ影響を及ぼした。とくに、福島県民は地震と津波による被災に加え、放射線被爆防止のため、自治体機能とともに全住民が県内外へ避難した自治体もある。多くの福島の人々が発災から現在まで長期の避難生活が続いており、8年経過した平成31年3月時点においても、福島県内での避難者は約9千人弱、福島から県外への避難者は約3万2千人、さらに令和4年3月における避難者は福島県内が約7千人、県外への避難者約2万6千人となっている。この間にも、さらなる大規模災害が続き、令和元年10月に発生した台風19号は福島県(とりわけ避難者の多いいわき市)への被害が甚大であり、多数の死傷者が報告されている。避難者への支援を行っている関係機関の職員等の生活や業務への被害が生じ、それまでの避難者支援活動にも大きな支障がみられた。さらに、この影響から回復する間もなく、令和2年1月からはCOVID-19が流行し、すべての住民が感染拡大防止のために他者との交流を自粛する行動が優先されている。コロナワクチン接種など、感染拡大防止対策もおこなわれているが、避難者は避難元自治体を離れ、何回も転居をせざるを得ない状況にあり、生活基盤の構築も難しい状況がある。COVID-19流行前から家族の学校や職業との関連から家族が分散して生活している形態もみられていたが、このコロナ感染症流行により、離れて暮らす家族との交流も難しくなり、高齢者は孤立・孤独等による心身の影響も加わることとなった。発災当初からの避難による生活行動の変化に伴う生活習慣病などの健康リスクや新型コロナ感染症予防行動(行動自粛等)による心身への影響、さらに避難元および避難先地域との交流ができないことによる生活や健康への影響が懸念され、これらの対策を具体的に検討している。
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