研究課題/領域番号 |
16H05607
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
佐々木 明子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 教授 (20167430)
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研究分担者 |
森田 久美子 東京医科歯科大学, 大学院保健衛生学研究科, 准教授 (40334445)
小野 ミツ 関西福祉大学, 看護学部, 教授 (60315182)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高齢者 / 介護予防 / 連想法 / 効果 / 検証 |
研究実績の概要 |
高齢者の介護予防における「連想法」を九州地方の自治体で、介護予防が必要な65歳以上の高齢者を対象に、介入群・対照群(通常の介護予防事業参加群)を設定し、週1回ずつ1年間実施した。 2018年3月にベースライン調査、2018年10月に6ヶ月後調査、2019年3月に1年後調査を行った。高齢者には質問紙調査、ケアスタッフ及びケアサポーターにはインタビュー調査を実施した。 質問紙調査の6ヶ月後の結果から、「現在の心と身体の状態」では、介入群における得点は向上しており、改善の傾向がみられた。EQ5Dの効用値による心身のQOLに関する健康状態では、介入群の得点は高くなり、状態が良くなっている傾向がみられた。 認知症チェックリストでは「物を置いた場所を忘れる」は、介入群・対照群ともに6ヶ月後に「まったくない」が増加しているが、介入群の増加が多かった。「5分前に聞いた話を思い出せない」は、介入群では「まったくない」が増加していた。認知症スコアの2区分(20点未満/20点以上)では、介入群・対照群とベースラインとも6ヶ月後は大きな変化はなかった。しかし、認知症スコアの総得点の比較では、介入群のほうが得点の改善が大きい傾向がみられた。うつ該当項目では、介入群・対照群ともに「該当項目2つ未満」はベースラインから6ヶ月後で増加していた。項目内では「毎日の生活に充実感がない」で介入群の減少がみられた。 これらの結果から「連想法」の実施は、高齢者のQOLや短期記憶の維持・向上に効果が得られる可能性が把握できた。 インタビュー調査から「週に1回集まって話すことで脳の活性化ができる」、「独居の高齢者が多く、コミュニケーションのきっかけや活性化につながった」、「交流・仲間づくりの機会となった」、「90代のグループ等では特に有効だった」等の結果が得られた。「連想法」は介護予防のツールとして活用しやすいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
65歳以上の高齢者に関する介護予防における「連想法」の効果を検証するため、九州地方の自治体において、介護予防活動に関わるケアスタッフとケアサポーター等のファシリテーター、介護予防活動に参加する住民の協力を得て「連想法」を開始し、1年にわたり継続して実施できた。地域住民の認知機能低下予防、生活の活性化を目指した介護予防活動の一つの方法として、活用することができ、さらに地域住民の社会交流を促進することに貢献できる可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
九州地方の自治体では、介護予防での「連想法」の介入群・対照群を設定し、作成した素材を使用して「連想法」を実施した。その効果を6ヵ月後まで分析したが、1年後の結果も検証していく予定である。今後はケアスタッフやケアサポーター等のファシリテーター、住民の協力を得て、さらに会話の活性化・交流の促進、認知機能低下を防止し、QOLの維持・向上につながる新たな「連想法」の開発や、通所サービス利用者等での「連想法」の実施を予定している。 さらに、市町村の介護予防が必要な住民だけでなく、東北地方のデイケアなどの通所サービスを利用中の要介護高齢者を対象に、介入群・対照群(各40名程度)を設定し、「連想法」を開始し、その効果を3ヵ月後・6ヵ月後・1年後に検証する予定である。また、「連想法」実施にかかわるファシリテーターの育成もさらに推進していく。 これらの結果については、学会発表や論文発表を行っていく予定である。
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