研究課題/領域番号 |
16H05612
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
富永 真己 京都橘大学, 看護学部, 教授 (40419974)
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研究分担者 |
朝倉 京子 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00360016)
朝倉 隆司 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (00183731)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 産業看護 |
研究実績の概要 |
【背景】2025年度に介護職員が約38万人不足すると推計される一方、国内の調査では3年未満で離職する介護職は全体の7割以上、離職理由は順に”職場の人間関係の問題””施設の理念や運営の不満”が多いと報告される。介護施設の快適職場づくり、中でも職場の心理的・制度的側面の快適化は喫緊の課題である。 【目的】本研究の第一段階として今年度は、地域包括ケアシステムに関わる施設として2種類の高齢者居宅施設の介護職と管理者を対象とした聞き取り調査を実施し、事例検討を行い考察する。同時に、その知見から労働職場環境と組織特性とその影響に関する次年度の量的調査の項目の検討を目的とした。 【方法】倫理委員会の承認後(No.197)、調査協力の同意が得られた2種類の高齢者居宅施設(特別養護老人ホーム,グループホーム)の施設長・中間管理職・介護職員を対象に2016年11月~翌年1月に聞き取り調査を実施した。オリジナルのSocial Capital and Ethical Indicator: SCEI)の5下位尺度の各質問項目を参考に、組織や職場の労働職場環境と組織特性の実態と課題に関し尋ねた。了解を得て記録・録音をとった後、逐語録を作成した。4施設3職位の計12名から聞き取りを行った。得られたデータについて、中間管理職を中心に施設管理者と介護職員との認識の差異を含め、支援的な組織環境について事例分析から帰納的に考察した。また次年度の量的調査の項目を検討した。 【考察】人材不足の背景に、夜勤や休息体制の課題とともに、個人及び組織の要因が認められた。離職率の低い組織では職種を超えた同職位間の定期的な交流や組織全体で情緒的・手段的サポートが有機的に働く等の組織特性が認められた。介護施設の支援的な組織環境の側面から労働職場環境と組織特性の実態と課題が明らかとなり、次年度の量的調査に向けた示唆が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、地域包括ケアシステムに関わる施設、中でも今後地域で特に需要が増す、2種類の高齢者居宅施設(特別養護老人ホーム,グループホーム)の介護職(現場実務者)と中間管理者及び施設長の3者を対象に、聞き取り調査を4施設、計12名に実施できた。また、得られた知見より、当初計画していた組織特性の測定尺度の高齢者居宅施設の労働者向けに改良し、さらに次年度の調査項目の検討が可能となった。一方で、当初計画の予算3割以上が削減で予算執行となったことから、調査の規模を縮小せざるを得ず、今回は訪問看護ステーションは対象から外すこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として平成29年度は以下を計画する。 【研究の目的】調査の協力が得られた地域包括ケアシステムに関わる施設として、高齢者居宅施設の2種類の組織(特別養護老人ホーム,グループホーム)の介護職(現場実務者)と中間管理者を対象に、大規模調査による量的研究(質問票調査法)を実施する。改良した組織特性の測定尺度の信頼性と妥当性を検討すると同時に、労働職場環境特性及び組織特性が、組織の健康に及ぼす影響を検証する。 【対象と方法】 (1)対象施設として関東・関西圏の、介護職員3人以上を有する介護保健施設100~150施設の介護職と看護職を対象とする。統計解析上、目標とするサンプル数は介護職1500人である。なお、サンプル数は用いる変数の数で必要時、増やすこととする。無記名自記式質問票調査による横断調査を実施する。前年度の研究の知見から検討及び改良した組織の健康と労働職場環境特性及び組織特性に関する質問項目を含め、協力が得られた施設経由で郵送法にて調査票を配布し、留め置き後、回答した調査票を封筒に厳封し返送してもらい回収する。回収した調査票のデータ入力は外部業者に委託する。 (2)データ解析と結果報告:地域包括ケアシステムに関わる施設向けに改良した組織特性の測定尺度の信頼性と妥当性について検討する。さらに、組織の健康(介護職の主観的健康度、職務満足と、職業的幸福感、離職意向、疾病休業日数等)を従属変数に、労働職場環境と組織特性の変数を独立変数とし、多変量解析にて関連を検証する。なお、協力施設への結果報告は、集団の集計結果を示した紙面での報告書を作成後、施設に郵送し、施設と協力者に結果報告をする。また高齢者居宅施設の労働職場環境と組織特性が、組織の健康に及ぼす影響に関する知見を学会等で発表・報告する。
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