研究実績の概要 |
北東シベリア タイガ‐ツンドラ境界域の湿地土壌の原核生物群集を16S rRNAを対象としたアンプリコンシークエンスにより解析した。16S rRNAを発現する活性の高い原核生物群集は、前年度実施したDNA解析に基づく群集とは大きく異なった。また、植生(コケ、スゲ)や土壌層位間でも群集構造は異なった。RNAに基づく群集ではActinobacteriaとユーリアーキオータの優占度が高くなった。特にメタン生成古細菌は、DNAに基づく群集での優占度は0.3-2.4%程度であったが、RNAに基づく群集の中では最大で14%を占めており、メタン生成古細菌の高い活性が示唆された。Methanosarcina, MethanosaetaがRNAを発現する優占グループで、DNAで優占したMethanomicrobiales, MethanocellalesはRNA解析に基づく群集の中では優占度が低かった。メタン酸化細菌は、群集全体の中の優占度はDNA, RNAともに2%以下で、典型的なType I, IIメタン酸化菌の比率は低かった。DNAで優占したMethylacidiphilalesはRNAではそれほど優占度は高くない一方、CrenothrixはRNAレベルの解析でも優占度が高かった。 13C標識メタンを添加した培養した土壌からDNAを抽出、分画後、13Cを取り込んだ群集を解析した。最も優占したのはCrenothrixであり、本グループがメタンを積極的に利用していることが裏付けられた。スゲ植生の土壌ではMethylomonasがCrenothrixに次いで優占することが示された。培養温度を5℃から15℃に上昇するとCrenothrixの優占度は著しく低下し、Methlymomonas, Methylosinusのほか、メタン酸化細菌以外の微生物群によるメタン由来炭素の取り込みが顕著となった。
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