研究実績の概要 |
熱帯域における降水の安定同位体比と降水量や気温など気象要素との関係を明らかにするため,インドネシア気象局に降水のサンプリングを依頼している. これまで2010年から2012年に取得した降水サンプルの解析は,博士課程留学生がインドネシア全域約30地点における降水同位体比の空間分布と季節変動を明らかにした(Belgaman et al., 2017). さらに,本科研費によって2016年から2018年までインドネシア全域約50地点における毎週の降水サンプルを取得した.現在,全部で1,200個を越えるサンプルが熊本大学に届いており,酸素,水素安定同位体比の分析を行っており,約800サンプルの分析を終えている. その他にも,H29年度は代表者が兼任している海洋研究開発機構(JAMSTEC)が主導して,Year of Maritime Continent (YMC)の集中観測がスマトラ島において行われた.そこで,2017年12月から2018年1月において,スマトラ島ベンクル市の降水同位体観測を行い,降水分布や同位体比の日変化を明らかにした(Ichiyanagi et al., in press). モデル研究では,インドネシア周辺域を対象とした同位体領域モデルによって,2010年から2013年までの降水量と同位体比を計算した結果,降水量の再現性はあまり良くないが,同位体比は半数以上の観測地点でよく再現できた.今後は2016年から2018年の観測データも含めてモデルの再現性を評価することと,グリッド内での狭い領域での降水量や同位体比の変動要因を考察する予定である. さらに,タイからの博士課程留学生がタイ全域における降水同位体比データを取得しており,その時空間分布や変動要因の解析を行っている.国際会議で発表するとともに,査読付英語論文を投稿中である.
|