研究課題/領域番号 |
16H05620
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
竹川 暢之 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (00324369)
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研究分担者 |
足立 光司 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 主任研究官 (90630814)
三澤 健太郎 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (10431991)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境計測 / ブラックカーボン / エアロゾル / 混合状態 / アジア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、オンライン化学分析と個別粒子解析を統合して、アジア低緯度域おけるブラックカーボン (BC) の濃度変動と混合状態を解明することである。主たる装置であるレーザー誘起白熱光検出-質量分析計 (LII-MS) について、効率的な校正法の開発を行った。実験室では、アトマイザ、電気移動度分級器 (DMA)、凝縮粒子カウンタ (CPC) を用いて単分散エアロゾルを発生させる方法が一般的であるが、フィールドで用いるには必ずしも適していない。そこで、アトマイザから発生させた粒子を分級せずに多分散のまま導入する方法を考案した。粒子濃度の定量はLII部のレーザー散乱光信号を用いて行い、その濃度に基づきMS部の校正を行う。本方法ではLII部の粒径決定精度が重要な要素となるため、定期的にポリスチレンラテックス (PSL) 粒子を用いて校正を行う手順を取り入れた。実験室において単分散校正と多分散校正を実施し、整合性について検証を行った。 当初計画では中国の広州郊外において観測を行う予定であったが、観測サイトの状況変化のため台湾に変更した。集中観測は2017年の2-3月に実施した。LII-MSを用いて硫酸塩、硝酸塩、有機炭素のうちBCと内部混合している割合を測定するとともに、透過型電子顕微鏡 (TEM) により粒子混合状態解析を行うために自動サンプラーによるエアロゾル捕集を行った。当該観測サイトではPM2.5やCOなどの常時観測が行われており、そのデータも活用した。低気圧通過などの気象条件の変化に応じて、大陸起源の汚染空気塊と海洋起源の清浄空気塊のコントラストが明確に捉えられた。実時間データに基づいて汚染空気の輸送が顕著な時期を抽出し、TEM初期解析を行った。その結果、多様な形態のBC混合粒子が見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では中国の広州郊外において観測を実施する予定であったが、観測サイトの状況変化のため再検討を行い、台湾北部の観測サイトを新たな場所として選定した。台湾は広州と同様に東アジア低緯度域に位置しており、気象条件に応じて大陸の発生源の影響を強く受ける。後方流跡線解析などと組み合わせることで、当初の研究目的である、アジア低緯度域におけるブラックカーボンの濃度変動と混合状態の解明を達成することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に台湾において取得した観測データの解析を行う。LII-MSのデータから観測期間全体の濃度変動を明らかにし、TEMによる個別粒子解析と組み合わせる。最終データが整備された時点で台湾の研究協力者との間で議論を行い、成果としてまとめる。 平成29年度末にはインド北東部のラクナウにおいて地上観測を行う予定である。台湾の観測と同様にLII-MSとサンプラーを観測サイトに設置して約1ヶ月間の集中観測を実施する。仮に状況の変化があれば、発生源や緯度帯の条件が類似したタイにおいて観測が実施できるように準備する。
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