研究課題
海洋生態系の一つであるサンゴ礁は、熱帯域において種多様性豊かな景観を保持している。しかし、近年の地球規模・地域規模の撹乱の影響でサンゴ礁の主要構成種であるサンゴの減衰が懸念されている。サンゴの個体群がどのように維持されているかを評価することは、個体群動態を予測する上で欠かせない。本研究では、北西太平洋域を対象として、景観遺伝学・ゲノム学的解析によりサンゴ個体群の維持機構を理解することを目的とした。アザミサンゴはインド洋から西太平洋域の熱帯の沿岸域を中心に生息する、雌雄異体の放卵放精型サンゴである。西太平洋およびインド洋のアザミサンゴ属でRAD-Seqによる一塩基多型(SNPs)解析を行ったところ、既知のものとは異なるパターンの遺伝的クラスターが検出された。また、エダアザミサンゴを除いて形態と遺伝的クラスターの一致は見られず、アザミサンゴ属の分類ついて再検討する余地がある。また、琉球列島の4地点で、GPSを使用してサンゴ群体の位置情報を記録しながらアザミサンゴの枝片を採取して、マイクロサテライトおよびミトコンドリアDNA領域の種間・種内遺伝子型、生殖細胞の有無と雌雄を決定した。奄美で採取した群体は全ての遺伝子型が互いに異なっていたが、他の3地点では距離が近いと近縁度が高い傾向にあり、破片分散により局所的に遺伝子型分布が偏ることがわかった。生殖腺を観察した群体の多くは成熟しており、また、遺伝子型と性は一致していた。しかし、性比に大きな偏りが見られたため、成熟群体が多い個体群でも有性生殖由来の群体は見かけより少なく、他地点への幼生供給源となっていない可能性がある。
3: やや遅れている
前年度までに一部の地域で試料採取を終えていなかったことから、解析が遅れている。
依然としてアザミサンゴ属以外の解析に関しては局所的である。また、海洋環境がサンゴ個体群間のコネクティビティに影響を及ぼすかを評価する。物理的な粒子拡散シミュレーション結果などと比較して、黒潮やその支流との関連性を考察する。
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PeerJ
巻: 6 ページ: e5915
10.7717/peerj.5915