研究課題/領域番号 |
16H05626
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
速水 祐一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00335887)
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研究分担者 |
佐藤 慎一 静岡大学, 理学部, 教授 (70332525)
森本 昭彦 愛媛大学, 沿岸環境科学研究センター, 教授 (80301323)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 海洋環境 / 大規模開発 / 貧酸素水塊 / ジャカルタ湾 / インドネシア / 環境影響評価 |
研究実績の概要 |
ジャカルタ湾における海洋環境変動の実態を把握するため、湾内の広域水質分布調査を5、9、12月に実施した。5月には、底層水の酸素消費速度を求めるために湾内10点で採水し、培養実験を行った。9月には、ジャカルタ湾奥から西部湾外にかけて10点で底質とマクロベントスの調査を行った。また、水温・塩分・流速・波浪・溶存酸素濃度の連続観測を5月まで実施した。 その結果、ジャカルタ湾では湾奥南東部を中心に周年にわたって貧酸素水塊が形成されていることを確認した。5月と12月には最低溶存酸素濃度は0.3mg/Lとほぼ無酸素となった水塊が認められた。昨年までの調査で、ジャカルタ湾の貧酸素水塊の形成には表層水の低塩分化にともなった成層の強化が原因となっていることが明らかになったため、今年度はジャカルタ湾に流入している最大の河川であるチタラム川の影響を調べた。その結果、成層強化・貧酸素水塊形成に対してチタラム川の影響は小さく、湾奥に流入している河川が主要な淡水供給源であることが明らかになった。底層水の酸素消費速度は0.58mg/L/dayと昨年度の結果に比べて小さかった。これは、湾奥部底層に外海水の進入があったためだと考えられた。底泥調査の結果では、貧酸素水塊が頻発する湾奥南東部で底泥が還元的になっていた。マクロベントス相も湾奥南東部で貧弱になっており、最も貧酸素の程度が激しかった点では1種しか採取されなかった。ただし、ジャカルタ湾外と比較すると、貧酸素の直接影響を受けていないにもかかわらず、ジャカルタ湾内のベントスは種組成・個体数共に貧弱であった。これは、貧酸素以外にもジャカルタ湾内のベントスにインパクトを与えている要因があることを示唆する。 現地調査以外に、ジャカルタ湾の3次元流動シミュレーションモデルの開発を行った。その結果、潮汐・潮流および密度流について観測結果を再現できる結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、佐賀大学、愛媛大学、静岡大学、インドネシア科学技術応用庁(BPPT)の研究者が共同でジャカルタ湾の海洋調査を実施すると共に、数値シミュレーションモデルの開発を行い、それに基づいて大規模開発がジャカルタ湾の海洋環境に与える影響を予測する計画である。 本年度は成層の強化を引き起こす低塩分水の供給源を明らかにするために3回の広域水質分布調査を行うとともに、酸素消費速度測定実験、底質・ベントス調査を各1回実施する予定であった。また、ジャカルタ湾の流動を再現する3次元数値シミュレーションモデルの開発を進める予定であった。これらの各調査は予定通り実施することができた。また、数値シミュレーションモデルの開発も順調に進んでる。これらのことから、全体の計画としてはおおむね順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの実験によって、ジャカルタ湾の底層水の酸素消費速度は求められたが、底泥による酸素消費は不明なままである。そこで今年度は、湾内の複数の点で底泥コアを採取して培養実験を行い、底泥による酸素消費を測定する。合わせて、広域的な水質分布調査を実施する。実験に失敗する可能性を考慮し、2回の実験・調査を行う。また、これまでに構築したジャカルタ湾の3次元流動シミュレーションモデルをベースに、貧酸素水塊を再現できる3次元生態系シミュレーションモデルを構築する。このシミュレーション結果を元に、貧酸素水塊の形成・変動機構を検討すると共に、大規模開発が貧酸素化に与える影響について考察する。
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