研究課題/領域番号 |
16H05631
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
作野 裕司 広島大学, 工学研究院, 准教授 (20332801)
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研究分担者 |
中井 智司 広島大学, 工学研究院, 教授 (80313295)
鈴木 淳 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 研究グループ長 (60344199)
長尾 正之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質情報研究部門, 主任研究員 (70251626)
陸田 秀実 広島大学, 工学研究院, 准教授 (80273126)
西嶋 渉 広島大学, 環境安全センター, 教授 (20243602)
井上 麻夕里 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (20451891)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境政策 / 環境分析 / リモートセンシング / 流体工学 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、以下の3項目について調査・研究を行った。すなわち、1)各河川河口から塊状サンゴ生息域への重金属の負荷実態調査、2) リモートセンシング技術を活用した海洋環境シミュレーションモデルの開発、3) サンゴ骨格を用いた重金属汚染実態の再現と汚染の空間分布の調査、である。 まず、1)の調査に関しては、サマナ湾流入河川において、各河川河口から塊状サンゴ生息域への重金属の負荷実態調査を行い、複数のサンゴ試料の取得とそれと同期した重金属・水質試料の採取を行った。水質試料ついては、固相抽出ディスクにより濃縮し、国内に持ち帰り分析に供した。また、サンゴについては輸入は完了しており、現在スラブ化と分析に着手している。一方、過去にハイナ川河口にて採取したサンゴにおいて、ハイナ川沿岸のバッテリー工場による鉛汚染発生時と同時期の年輪に鉛濃度の上昇を確認した。さらに、ハイナ川河口から離れた場所から採取したサンゴ試料には、最近の鉛汚染を示唆する分析結果が得られた。付近には、工場があり、そうした人為的活動が影響した可能性もある。 次に2)の研究に関しては、すでに開発された海洋環境シミュレーションの改良や現地の環境に合わせたチューニング作業に必要なサマナ湾の水理・水質環境特性を把握するための現地調査を行うとともに、近年のLandsat-8データの可視・水温画像を使って、ユナ川からサマナ湾へ流出する懸濁物質の二次元的な拡散状態(分布パターン)を把握した。また過去にハイナ川河口沖のカリブ海で取得したサンゴコア試料から推定された過去の水温環境変遷と、衛星AQUA MODISデータから得られた表面水温(SST)データを比較した. さらに3)の調査に関しては、過去にハイナ川河口沖のカリブ海で取得したサンゴコア試料から分析された重金属の経年変動解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した研究計画に沿って、おおむね順調に進展している。具体的には、重金属汚染が懸念されているドミニカ共和国北東部に位置するサマナ湾において、現地調査を実施し、新たに複数のサンゴ試料の採取に成功した。また、過去にハイナ川河口にて採取したサンゴ試料の分析も継続しており、上記のような結果が得られている。今後は、年代を特定するための分析を継続すると共に、周辺の汚染状況について現地での聞き取り調査を行う必要がある。 また、リモートセンシングデータを利用したモデルの構築においても、最新の衛星データを取得して、懸濁物質の分布パターンなどを把握した。ただし、同地域における過去のLandsatデータの取得・解析が遅れているため、次年度の年頭にその作業を行う必要がある。さらに過去のコア試料の分析により、すでに重金属の経年変動の推定が行われており、論文を執筆中である。以上のことから、本研究は現在まで順調に実施されていると自己評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究も、おおむね当初の計画通りで推進していけばよいと考える。ただし、若干遅れている衛星解析、モデルの修正は、今後やや急いで進展させる必要がある。また、今後もドミニカ共和国における現地調査や現地の大学(サントドミンゴ自治大学)の研究者との議論を深めることにより、研究の信頼性を高める方針である。
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