研究課題
ケンブリッジ大学図書館が所蔵するカイロゲニザ文書(10~18世紀に書かれた中東、地中海地域の文書)の紙の調査を行なった。2017年度に24点の限られた数の文書の分析を行なったが、2019年度は300点を超える文書の分析を行なった。この結果、52点の文書の紙表面にラグペーパーであることを示す明確な証拠となる糸屑片や布片が存在することを確認した。これによって、中東や地中海地域では襤褸布等を原材料として紙を作る製法が一般的であったことを明確な証拠とともに示すことができた。オランダ国立公文書館が所蔵するオランダ東インド会社による記録資料(17~19世紀)に使われている紙の調査を行なった。これまでに鳥の子紙と洋紙の存在は知られていたが、本調査で以下に述べるより詳細な事実を明らかにすることができた。洋紙が最も多く使われているがウォーターマークを分析することによってフランス製、オランダ製、イギリス製、アメリカ製と推定される紙の存在を確認でき、時代によって使用されている紙が変化していることも確認できた。中にはオランダ東インド会社(VOC)やイギリス東インド会社(VEIC)のロゴがウォーターマークに採用されている洋紙も存在した。洋紙以外にも、鳥の子紙(日本製雁皮紙の一種)日本製の楮紙、タパ(東南アジア製の樹皮を打って平らにしたシート)、そして、(洋紙でも和紙でもない)中国製や東南アジア製の可能性のある紙(再生紙(印刷されたアルファベット文字が見られる紙小片が混じっている紙)や糸屑片が残るラグペーパーを含む)の存在も確認できた。このような再生紙やラグペーパーの存在はそれまで紙が存在しなかった東南アジアにヨーロッパの製紙技法が伝わった証拠になる可能性がある。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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