研究課題/領域番号 |
16H05641
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邉 悌二 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40240501)
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研究分担者 |
韓 志昊 立教大学, 観光学部, 准教授 (40409545)
渡辺 和之 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人間生活環境 / 環境適応 / 自然資源管理 / 土地利用変化 / ヒマラヤ / 持続的観光 / 国立公園管理 / 持続可能な開発 |
研究実績の概要 |
ヒマラヤ山脈およびチベット高原からなる巨大な山塊に存在する社会は,外的なドライバー(気候変化や政治・経済等の変化)によって大きく変容しているが,その多様性についてはまだ未解明の地域が多い。そこで本研究では,変容の程度が著しく異なる山塊の北縁(中国)と南縁(ネパール)を事例として,山岳社会における主な生業の現状を明らかにし,その将来の持続性について議論することを目的とする。その際,主な生業として共通に認められる牧畜業の変容に着目し,その変容に最も大きく関与する観光開発に焦点をあてて,牧畜業と観光業の変化(発達・衰退・相互作用)から将来の持続性を評価する。初年度であるH28年度には以下の調査を行った。 (1)中国では,観光開発が進んでいる西安市南部にあるチンリン山脈における土地利用調査と観光の現状に関する調査を行った。また,チーリェン山地およびチンリン山脈において,衛星画像による最近の土地利用の空間分布変化の解析に着手した。 (2)ネパールでは,ランタン・ヒマール(ヘランブ地域)およびクンブ・ヒマールにおいて,過去および現在の家畜の移牧に関して,その季節的移動経路・滞在場所,滞在期間,飼育規模などを聞き取り方式で明らかにした。クンブ・ヒマールでは,衛星画像による最近の土地利用の空間分布変化の解析を行った。また,アンナプルナ・ヒマール南麓で,住民の生業と災害の関係に関する調査を行った。 (3) インドにおいては,衛星画像による最近の土地利用の空間分布変化を解析し,森林のフラグメンテーションと土地利用変化,観光開発,災害の関係について分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 巨大山塊の北側の中国では,当初は,チーリェン山地で調査を実施する予定であったが,まず観光開発が進んでいる西安市南部にあるチンリン山脈における土地利用調査と観光の現状に関する調査を行った。衛星画像による最近の土地利用の空間分布変化(チーリェン山地およびチンリン山脈)については,解析に着手したところであり,解析結果はH29年度に終了する。 (2)巨大山塊の南側では,ネパール,アンナプルナ・ヒマールを主要対象地域とする予定であったが,巨大山塊南側が多様な土地利用変化をしていることから,対象地域を増やして調査を実施した。ネパールでは,アンナプルナ・ヒマール南麓で,住民の生業と災害の関係に関する調査を行い,国際誌(Water)に成果を投稿準備している。ランタン・ヒマールでは家畜の移牧が残っているが,クンブ・ヒマールでは,ほぼ消滅していることがわかった。クンブ・ヒマールにおける観光業の変化については,過去の研究成果に今回の成果を加えて,長期にわたる変化の解析ができた。また,クンブ・ヒマールでは,衛星画像を使った土地利用変化の解析を進めている。インド側の成果は,国際誌(Environments)に投稿し,受理が決定した。 (3) 第33回国際地理学会議(北京)の山岳コミッション(C08.29 Mountain Response to Global Change)において,ドイツ・ベルリン自由大学のヘルマン・クロイツマンと共同でセッション’Mountain communities in High Asia: searching for a position in a globalized world’を開催し,渡辺和之がネパールの家畜移牧の変化について報告をした。
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今後の研究の推進方策 |
巨大山塊の北側の中国では,H29年度中にチーリェン山地およびチンリン山脈における土地利用変化の解析を終え,チンリン山脈における観光開発に関するアンケート調査を実施する(対象者約1,000人,4~6月)。チーリェン山地においては,家畜の移牧に関する現地調査を開始する(9~10月)。 巨大山塊の南側では,アンナプルナ・ヒマールで,衛星画像解析による土地利用変化の解析を行い(H29年度),H30年度に本格的に開始する現地調査の予察調査をH29年3月に行う。ランタン・ヒマールおよびクンブ・ヒマールでは,家畜の移牧形態の変容に関する現地調査を継続し,特にクンブ・ヒマールでわずかに残っている移牧の現状を明らかにする。クンブ・ヒマールにおける観光業の変化については,ルクラ,ナムチェバザールおよびポルツェの3つの集落に焦点を充てて調査する(11~12月)。 これらの成果を観光開発の程度に大きな違いがある中国の2山域と,同様に違いがあるネパール・インドの4地域で比較する。最終的には,H30年に出版予定のパミールの研究成果と結合させて,アジアの巨大山塊の南西北の比較を行う。 研究成果については,カトマンズで,山岳ツーリズムに関する国際シンポジウムをトリブバン大学と共催して公表するとともに,台北で全球陸域プロジェクト(GLP)日本拠点オフィスとGLP台北拠点オフィスとで国際会議を共催して公表する。また,国際誌で特集号を組んで公表したい。
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