研究課題/領域番号 |
16H05643
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長谷部 徳子 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (60272944)
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研究分担者 |
福士 圭介 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 准教授 (90444207)
勝田 長貴 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377985)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 湖沼堆積物 / 古環境変動 / モンゴル |
研究実績の概要 |
今年度は夏に予定どおりモンゴル南西部のオルゴイ湖,ブーンツァガン湖,オログ湖の調査を行った。また予察的に研究サイトの可能性を調べるため,南東部のガンガ湖の調査も行った。 オルゴイ湖の調査では,湖深を調べおおよその水深図を作成した。また湖内の水の組成を調べた。それに基づきオルゴイ湖は南湖と北湖に分けることができ,北湖盆の方が水深が深く(1.5 mくらい)かつ塩濃度が高い傾向があった。またドローンによる地形調査を行い,古汀線の確認や流入河川の形状調査を行った。これらの知見に基づき,今後の冬期の氷結時の掘削サイトの決定や,オルゴイ湖の水深変動と河川による水供給の関連性の議論を行った。ブーンツァガン湖では水の組成の調査と堆積物試料の採取を行い,堆積物試料としてはこれまでで最も長い97cmのコアを得ることができた。このコアを用いて粒径,物理量の測定を行った。オログ湖では水の化学組成の調査を行った。またオログ湖とブーンツァガン湖の間にある旧汀線の地形調査を行い,いくつかの露頭で古湖沼堆積物の試料採集を行った。これらの試料は湖水深が深かったのがいつの時代に相当するのかの年代決定に利用する予定である。 調査とは別に,予察的に得ていたオログ湖およびオルゴイ湖から採取した堆積物試料の分析をすすめた。その際に放射能濃度を測定することによって堆積年代を決定した。この年代値に基づき,堆積物の粒径や物理量特性の深さに対する変動を年代に対する変動におき換え,地域の気象データとの比較を行った。気象データの解析はデータの安定的な取得がなされていないこともあって難しく,どのような気象要素が堆積物に記録を残しているかの判断はまだこれからであるが,オログ湖では干上がったときと降雨の減少および塩酸可溶物の減少が一致し,オルゴイ湖では最近の平均的な気温の上昇と塩酸可溶物の濃度上昇,および風力と粒径の相関関係がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り夏にモンゴル南西部のオルゴイ湖,ブーンツァガン湖,オログ湖の調査を行った。また予察的に研究サイトの可能性を調べるため,南東部のガンガ湖の調査も行った。地形調査に当初予定に入れていなかったドローンによる調査を取入れたため,新たに得られた知見もあり,この分を論文としてまとめ現在投稿中である。また結氷期の長尺コア掘削を目指した冬の調査時には掘削会社との調整を当初予定よりはやめて実施することができた。これら2点については当初予定よりかなりすすめることができている。予察的に得た試料の分析や観測気象データの解析も順調に進んでいる。ただ気象観測データが連続的にないため解析が難しいと感じている。また試料の分析に関して,炭酸塩鉱物の分離が難しく当初予定で考えていた炭酸塩を利用した年代決定がうまく行くかどうかまだ未知数である。これらに鑑み,全体としては概ね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,モンゴル南西部のオルゴイ湖,ブーンツァガン湖,オログ湖において,冬期の結氷期に長尺コアの採取及びその分析をすすめる。また露頭から採取した古湖沼堆積物の年代決定を行い,古水位が高かった時期の特定およびその時期の堆積物コアの特徴と対比させる。 これらの取り組みにより,当初目的の乾燥域の古環境変動と全地球環境変動との関係について議論できる材料を用意する。
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備考 |
研究室のHPにて調査の様子などの紹介を行った。
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