研究課題/領域番号 |
16H05648
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
プシュパラール ディニル 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (10361148)
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研究分担者 |
冬木 勝仁 東北大学, 農学研究科, 准教授 (00229105)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 津波 / レジリエンス / 日本 / スリランカ / インドネシア |
研究実績の概要 |
2016年度は、現地調査をスリランカで2回、インドネシアで1回実施した。また、インドネシアのバンダ・アチェで開催された会議で招待講演を行った。加えて、査読を経た論文が出版された。 現地調査の焦点は、社会経済、地理、インフラの各要因が沿岸域の強靭性(レジリエンス)にどのように影響を及ぼすかを特定することであった。スリランカでは、マングローブ林のようなエコシステムが沿岸域の町を守っていた。沿岸域の町であるMedillaとRekawaを例として取り上げる。本研究では、(自然に形成された)砂丘と地滑りを防ぐための植生の組み合わせが津波を阻止するうえで重要な役目を果たしているとの結論に至った。特に、マングローブ林が砂丘の後背地に位置する場合、林のトラップ効果によってほとんどの瓦礫が阻止され、林の背後の建物の被害を防ぐ。 防潮堤や大型の建物のようなインフラによって、津波から沿岸部のコミュニティが守られている。この一例がスリランカのGalle市のDutch Fortに見られる。2004年12月26日の津波襲来の際、この城壁は、350年前に建造されたDutch Fortの低い門を通って押し寄せて来た津波から、城壁内部の約400棟の建物を守ったのである。 インドネシアとスリランカにおいて、インド洋大津波の後で移住した住民に面接調査を行った結果、 人口構造や経済力、自給自足能力、医療施設の充実度、制度の堅固性、社会の公正さ(インテグリティ)、治安、防災意識が災害強靭性(災害レジリエンス)を高めるのに重要な役割を果たしていたことが明らかになった。インドネシアにおいては、社会の公正さや治安、防災意識を高めるうえで宗教が非常に重要な役割を果たしていると思われる。 重要な地理的特徴やインフラ、面接調査場所の写真記録には地理情報を付け加え、次いで、地理情報システム(GIS)ソフトウエアを用いてマッピングした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害強靭性(災害レジリエンス)に影響を与える要因については、広範囲な文献調査によって十分に理解したうえで、包括的な現地調査によって確認した。災害強靭性(災害レジリエンス)を測定するための独自の概念を開発した。本研究ではGISを適切に取り入れ、この種の研究に求められるように、沿岸域の地理的特徴を主要な注目点とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究においては、材料力学論をもとに強靭性(レジリエンス)を測定するための数学モデルを開発することに焦点を置く。材料力学の分野では、強靭性とは、エネルギーを弾性的に吸収する材料の能力のことであり、一方、弾性とは、応力(ストレス)を受けて歪み応力が解放されると元の大きさに戻ろうとする材料の能力と定義される。同様に、災害強靭性(災害レジリエンス)とは、災害が発生した際にこれに抗し、災害が終わった段階でもとの状態に戻ろうとする社会の能力と定義される。数学モデルの検証は、スリランカのGalle Fortを本研究のベンチマークと位置づけ、当所における現地調査を通して収集したデータを数学モデルに入力して行う。 現地の強靭性(レジリエンス)の大きさや瞬時の安全性(サバイバビリティ)、および、上記の場所での復旧可能性を決定するために、研究チームは、スリランカの災害マネジメントに常時関わっている、何ヵ所かの然るべき機関の代表に会い、綿密な面接調査を行う。研究チームは、また、災害マネジメントに常時関わっているNGOの代表や、スリランカのGalle Fortにおけるコミュニティの指導者に会ってフォーカス・グループ・ディスカッションを行う。調査において収集したデータは、研究代表者が開発した方法を用いて指標に変換する。
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