研究課題/領域番号 |
16H05651
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
長尾 年恭 東海大学, 海洋研究所, 教授 (20183890)
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研究分担者 |
熊谷 博之 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (10343758)
大倉 敬宏 京都大学, 理学研究科, 教授 (40233077)
楠本 成寿 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (50338761)
大場 武 東海大学, 理学部, 教授 (60203915)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タール火山 / フィリピン / 噴火予測 / 防災 / 啓発活動 |
研究実績の概要 |
平成28年度には延べ12名がフィリピンに渡航し、マニラ近郊のタール火山について地震・電磁気・重力・地形および地球化学的な観測やサンプリングを実施した。地震学分野では、振幅情報を用いた震源決定(ASL)法によるタール火山の監視システムの高度化を進めた。またASL法で用いられているS波の等方輻射の仮定が、火山における非常に強い構造不均質性による地震波散乱によって成り立っていることを、タール火山の観測点配置を用いた波形シミュレーションおよび理論的考察から明らかにした。さらにこれらの考察に基づき、タール火山の散乱構造の推定を行った。この成果は森岡の修士論文としてまとめられるとともに、国際誌に投稿中である。地球電磁気分野では、繰り返し地磁気測量を実施した。また長期観測システムの不具合について、ケーブル等の交換を実施し、観測状況を改善した。さらに別途予算(東海大学の独自予算)で、フィリピン側研究者を3週間日本に招聘し、電磁気学的な3次元インバージョンソフトウエアについての講習を行なった。 重力分野では、日本からラコスト・ロンバーグ重力計を持ち込み、タール火山島での重力測定を実施したほか、タール湖岸にあるPHIVOLCS観測所とマニラ近郊のモンテンルパ地磁気・重力基準点との重力結合を行なった。また重力異常を求めるためには地形補正を行う必要があり、そのためには精密な地形データが必要となる。この要求を実現するため、東京大学の早川博士に現地調査参加を要請し、3次元地形データ(精度10cmを目標としている)の作成を開始した。地球化学分野では、水蒸気、炭酸ガス、硫化水素ガスなどの多成分計測のための噴気のサンプリングを実施した。今後採取法を含め、現地観測者への技術移転も視野に入れて今後の計測を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本からの重力計の持ち出し(計測器が機内持ち込みである点と大容量バッテリーをはずす事ができないため)について、フィリピン航空と事前に念入りな打ち合わせを実施していたが、実際の空港カウンターでやはり事情説明に苦労した。それ以外の点では、観測計画は当初計画どおり順調に経過した。ただGPS地殻変動調査については、研究分担者の大倉敬宏教授が所属する京都大学火山研究センターが熊本地震において、甚大な被害を受けたため、現地調査を行う事ができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
タール火山はdecade volcanoと呼ばれる位、過去の噴火活動は激しかったが、現在異例とも思える長期間の噴火休止期間(40年以上)が継続している。この原因の一つが火山島直下の構造(熱水だまりかマグマだまりか)に起因していると考えられている。 本研究を遂行する事により、地震学的・地球電磁気学的・重力異常からみたモデルの構築が可能となり、火山島直下の構造を明らかにする事により、将来の噴火可能性に関する情報を得る事が期待され、減災に資する事を目的としていきたい。またマヨン火山についても、地震学的な研究を進め、マグマだまりの詳細な大きさと位置の把握を予定している。
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