研究課題/領域番号 |
16H05653
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
滝沢 龍 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 准教授 (30420243)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ストレス / こころの健康 / 生物学的指標 / ライフコース・アプローチ / レジリエンス / 縦断コホート / 逆境体験 / 虐待 |
研究実績の概要 |
数万人規模の英国等で行われる複数の出生コホートの縦断的データを用いて、子ども期の逆境体験[虐待、いじめ、貧困(低い社会経済的地位)、本人の精神・行動障害(抑うつ・不安・精神病症状・自傷・希死念慮等)、養育者の精神障害等]が成人に至る一生涯の健康・生活への影響を立証するために生涯発達の視点からの検討を引き続き行った。複数回ロンドン大学で行われる共同研究者会議に参加し、様々な視点からの解析や論文作成、次の測定の準備について議論を行った。2年目の今年度は、米国University of Pennsylvaniaと英国King's College Londonとの共同研究でE-Risk cohortからの論文公表(Jaffee, Takizawa, Arseneault, Psychological Medicine, 2017)にもつながった。子ども期に虐待経験があったとしても、安定した温かい対人関係があることで、その成人の健康や健康行動悪影響を緩和できる可変性の環境要因を示唆したもので、逆境体験を対するレジリエンスにつながる報告である。2018年3月には、ロンドンで行われた60 years of our lives: A scientific conference celebrating the National Child Development Study at 60というカンファレンスに参加し、The award for outstanding recent contributions to the science of National Child Development StudyをThe Scientific Committee for the National Child Development Studyより受賞した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2年目の今年度は、E-Risk cohortからの論文(Jaffee, Takizawa, Arseneault, Psychological Medicine, 2017)を公表し、逆境体験を対するレジリエンスにつながる報告を行った。ロンドンでの共同研究者会議に引き続き定期的に参加した。昨年度申請した尺度は、2017年から開始する計測に使用されることが決まった。2018年3月には、ロンドンで行われた60 years of our lives: A scientific conference celebrating the National Child Development Study at 60というカンファレンスに参加し、Recent Contribution Awardを受賞した。
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今後の研究の推進方策 |
英国・ニュージーランドで行われる出生コホート研究は、健康・生活習慣と教育・経済などの人生全体を見据えた生活環境全般を出生時から計測しており、数十年のフォローアップ期間を持ち、成人期の測定を定期的に行っている。申請者は海外共同研究者とそのデータ使用申請を済ませている。本計画の前半は、子ども期の逆境体験と成人期の健康・生活の変化について、それぞれのコホートの変数の把握、コホート間の比較ができるか調査・確認し、長期的な関連を検討する。
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