研究課題
英国国家プロジェクトとして、数万人規模で行われる複数の出生コホート研究に参加し、データ解析や次回測定へのConsultationを受けている。縦断的な出席コホートデータを用いて、子ども期の逆境体験[虐待、いじめ、貧困(養育者の低い社会経済的地位)、本人の 精神・行動障害(抑うつ・不安・精神病症状・自傷・希死念慮等)、養育者の精神障害等]が成人に至る一生涯の健康・生活への影響を立証するために生涯発達の 視点から検討を続けている。今年度も、英国ロンドン大学で行われる世界中の共同研究者との研究会議に定期的に参加し、解析・公表や次の計測計画について議論している。米国Duke Universityと英国King's College Londonとの共同研究で英国の大規模な双生児コホート( the Environmental-Risk (E-Risk) Longitudinal Twin Study)を用いて、さまざまな遺伝的素因を統制しても、なお純粋に環境的要因として思春期までの逆境体験が自傷・自殺の思考と行動へ影響を与えていることを、双生児法を用いた頑健な統計的検討で初めて明らかにした(Baldwin JR et al, 2019)。逆境体験の一部は予防対策によって可変性のある環境要因であり、思春期における自傷・自殺へ寄与は確実であることを示し、今後の若者への健康施策・予防対策に寄与する結果である。こうした示唆を含めて、レジリエンスや生産性向上を目指した集団認知行動療法やリラクゼーション法などの予防介入を用いて、ランダム化比較試験など科学的エビデンスの高い研究デザインで効果実証する必要性を示した。
2: おおむね順調に進展している
年度初めにロンドン大学での共同研究会議にも参加し、その後も電子媒体でのやり取りをしながら、順調にデータ解析や学会・論文において公表が進んでいる。一方で、新型コロナウィルス感染症の世界的な流行で、年度最後に予定してたロンドン大学での共同研究者会議が中止となり、同時期に英国での複数のコホート研究の測定が中断となり、来年度以降の研究計画に影響がやや懸念される。
引き続き、英国・ニュージーランド等で行われる出生コホート研究に参加していく。参加している複数のコホート研究は、健康・生活習慣と教育・経済などの人生全体を見据えた生活環境全般を出生時から計測し、数十年のフォローアップ期間を持ち、成人期の測定を定期的に行っており、申請者は海外共同研究者とその新データの測定前にコンサルテーションを受けており、データ使用も可能となっている。子ども期の逆境体験と成人期の健康・生活の変化について、それぞれのコホートの変数の把握、コホート間の比較ができるか調査・確認し、長期的な関連を次年度も引き続き検討していく。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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http://www.p.u-tokyo.ac.jp/~takizawa-lab/