研究課題
29年度は、カメルーン東南部において、研究協力者とともに(1)高狩猟圧下における野生動物の分布と生息密度を調査するために2つの住民共同管理狩猟区(CHZ13、CHZ14)内に設置したカメラトラップを訪問し、データの回収と機材のメンテナンスをおこなった。また(2)研究協力者の実施しているプロジェクトと連携して、住民や調査地域の森林保全にかかわる諸アクターの参加のもとで、野生動物マネジメントや非木材森林資源の利用権にかんするワークショップを実施した。前年度までの調査で得られたデータを分析して執筆した、推定方法によって大きく異る動物密度のうち、どれがもっとも妥当なのかについて考察した論文は、アフリカにおける生態学研究の専門誌であるAfrican Jouranl of Ecology誌に掲載された。この論文では、糞カウントと昼・夜の直接観察を比較したが、さらに現在、初年度に実施した同一トランセクト上におけるカメラトラップによる密度推定と比較する論文を執筆中である。なお、カメラトラップによる動物密度推定については、研究分担者が新しいモデルを考案した論文が、Journal of Applied Ecology誌に掲載された。ワークショップでは、試行的に住民によるモニタリングをおこなった結果を住民自身が報告し、地域の森林保全当局の責任者らと意見交換をおこなったうえで、住民主体のワイルドライフ・マネジメントの実現へむけて、ひきつづき継続していくことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
29年度は8月までに渡航して、2月、3月に設置したカメラトラップからデータを回収する予定であったが、別の大型プロジェクトの導入期と重なり、その対応に追われたため、データ回収が11月にずれ込んでしまった。そのため、途中で電池が切れているカメラが多く、その期間のデータを得ることができなかった。ただし、これは目的を達成できなくなるようなロスではない。その他の調査項目については当初の計画通り実施できた。
30年度は以下の事柄を実施する。(1) 蓄積したカメラトラップのデータ解析を継続して野生動物の密度推定をおこなう。(2) これまで収集したデータを精査したうえでカメラの配置プランを更新し、カメルーン東南部におけるデータ収集を継続する。(3) 現地ハンターの在来知に関するデータをひきつづき収集する。(4) 昨年度学会報告をおこなった従来の方法とカメラトラップ法による密度推定値の比較と方法の信頼性について、データ分析の精査と考察の練り直しをおこなったうえで論文を執筆する。(5) 昨年度学会報告をおこなった現地ハンターの在来知に関する研究成果について、データ分析の精査と考察の練り直しをおこなったうえで論文を執筆する。(6) 現地NGO等と連携して住民参加のワークショップを開催し、住民によって運営可能な森林資源マネジメントの条件について議論する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件)
African Journal of Ecology
巻: 0 ページ: 1-9
10.1111/aje.12518
Journal of Applied Ecology
巻: 55 ページ: 735-744
10.1111/1365-2664.13059
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