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2016 年度 実績報告書

アジアにおける社会包摂型アーツマネジメントの展開

研究課題

研究課題/領域番号 16H05670
研究機関大阪市立大学

研究代表者

中川 眞  大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (40135637)

研究分担者 平田 オリザ  東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 特任教授 (90327304)
藤野 一夫  神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20219033)
岩澤 孝子  北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40583282)
梅田 英春  静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (40316203)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード社会的包摂 / ポスト・グローバル化 / アーツマネジメント / 社会空間 / デモクラシー / 社会正義 / アート
研究実績の概要

平成28年度は、主としてミャンマー、タイにおいて調査を行った。50数年ぶりに文民大統領を輩出したミャンマーでは、民主化が大きなテーマとなっている。民主化に向けて抵抗を続け、逮捕・入獄も辞さなかったアーティストたちの動向が、社会のなかにどのような形で進展しているのか、それを見極めることから始めた。手法としてはヤンゴンのKZL ART、NEW ZERO ART SPACE、THINK GALLERYなど、ミャンマーを代表する活動的なアートスペース等を訪問し、聞き取りを行った。検閲が解除され、「政府に対するレジスタンス」というテーマが背景にしりぞき、新たなコミュニティ形成を視野に入れた表現が出現してきている。特にTHINK GALLERYでのLGBT関連の展示は、アジアのなかでも先駆的な表現形態としてユニークなものであった。本調査を踏まえ、第11回アジア・アーツマネジメント会議をヤンゴンで開催した。これには日本、ミャンマー、タイ、USAの研究者、実務家が参加した。
タイでは、平成29年3月に行われたコミュニティ・フェスティバルを調査対象とし、少数民族である北部ラフ族のチェンダオ村ならびにバンコク市内のサンプランコミュニティの子供たちに対するワークショップ~パフォーマンスに焦点をあてた。この調査と並行して第15回都市文化研究フォーラムをバンコクで開催し、中川眞が基調講演を行った。また、インドネシアのジョグジャカルタで第15回都市研究フォーラムを行い、そこでも中川眞が基調講演を行った。
雨森信(協力者)とともに『社会包摂型アーツマネジメント』刊行のための編集を開始するとともに、英文ジャーナル‘Urban Culture Research’Vol.13の編集に携わった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画は、フィリピンのマニラで、アーティストのプライベートスペースにおけるアートの社会性の調査、また少女売買の被害者救援シェルターにおける自尊感情回復プログラムの調査、ストリートチルドレンへの美術教育についての調査を、またバギオで、韓国・日本からの移民・移住者の問題や環境保全活動との連動についての調査を行う予定であった。そしてベトナムではホーチミンとハノイを拠点にして、アート活動に大きな影響を与える検閲・言論統制への対応、急激な観光開発による景観や文化の破壊に抗する運動などに焦点をあてて、1970年代のベトナム戦争が残した負の遺産にアート表現がどのように関わっているについて、特にハノイではハノイ医科大学の協力を得て、ホスピタルアートの可能性について検討を行う予定であった。
しかし、フィリピンでは大統領の麻薬撲滅に関する強引な政策によって治安が悪化したため、調査の安全が保障されないと判断して、同様に移民や少数民族の問題を抱えているタイへと調査地を変更した。また、ハノイ医科大学との交渉が不調に終わったこともあり、ベトナムと同様に検閲や言論統制の厳しかったミャンマーへと調査地の変更を行った。
以上のように、調査地については大きな変更があったものの、調査テーマについてはぶれることなく代替調査地で十分に取り組むことができたため、成果としてはほぼ予定通りあがったと判断している。

今後の研究の推進方策

【調査】ベトナムではホーチミンとハノイを拠点にして、検閲・言論統制のあるなかでのコミュニティベースのアート活動の可能性、急激な観光開発による景観や文化の破壊に抗する運動などに焦点をあてる。可能であればフエにおいても調査する。また、第12回アジア・アーツマネジメント会議を平成30年度にハノイで開催予定であり、その準備も行う。タイでは、昨年度に引き続き、コミュニティアート・フェスティバルの調査を、参与観察型で行う。日本やアジアのアートプロジェクトの企画に大きな影響を与えたミュンスターのフェスティバル(10年に1回)を調査し、アートと社会の関係を俯瞰する視点についての考察を深める。
【国際集会】バンコク(チュラロンコン大学)にて第16回都市文化研究フォーラムを開催し、中川眞が基調講演を行う。ジョグジャカルタ(ガジャマダ大学)で第16回都市研究フォーラムを開催し、中川眞が基調講演を行う。また、プノンペンでのアジア・アーツマネジメント会議開催の可能性を追求し、条件が整えば開催する。
【発信等】中川眞・雨森信(編著)『社会包摂型アーツマネジメント入門』の刊行(経費は出版社主導)と‘Urban Culture Research’ Vol. 14を編集する。そのほか、個々の研究者は論文を執筆する。

  • 研究成果

    (23件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 7件、 招待講演 8件) 図書 (1件) 学会・シンポジウム開催 (3件)

  • [国際共同研究] チュラロンコン大学(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      チュラロンコン大学
  • [国際共同研究] ガジャマダ大学/インドネシア芸術大学ジョグジャカルタ校(インドネシア)

    • 国名
      インドネシア
    • 外国機関名
      ガジャマダ大学/インドネシア芸術大学ジョグジャカルタ校
  • [国際共同研究] ミャンマー大学(ミャンマー)

    • 国名
      ミャンマー
    • 外国機関名
      ミャンマー大学
  • [雑誌論文] ソーシャル・エンタープライズと芸術 ―タイの人形劇が地域社会に及ぼすインパクト―2017

    • 著者名/発表者名
      岩澤孝子
    • 雑誌名

      芸術・スポーツ文化学研究

      巻: 3 ページ: 327-343

  • [雑誌論文] アジアを視野にいれた社会包摂型アーツマネジメントの形成に向けて2017

    • 著者名/発表者名
      中川眞
    • 雑誌名

      包摂都市のレジリエンス

      巻: 1 ページ: 99-110

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 戦前の日本における大正琴の輸出とそのインドネシアへの伝播2017

    • 著者名/発表者名
      梅田英春
    • 雑誌名

      静岡文化芸術大学研究紀要

      巻: 17 ページ: 56-89

  • [雑誌論文] 踊る人形遣い ―タイ人形劇における身体表現―2016

    • 著者名/発表者名
      岩澤孝子
    • 雑誌名

      北海道教育大学紀要 人文科学・社会科学編

      巻: 67-1 ページ: 159-174

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Changes of Balinese Gamelan in Indonesia: Pitch of Gamelan Gong Kebyar Relating to Educational Institutions.2016

    • 著者名/発表者名
      梅田英春
    • 雑誌名

      Report of The Research Instiotute of Industrial Technology

      巻: 100 ページ: 42-64

    • 査読あり
  • [学会発表] 知識の量を量る試験から、学ぶ仲間を選ぶ試験へ2017

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 学会等名
      大学教育研究フォーラム
    • 発表場所
      京都大学百周年時計台記念館(京都市)
    • 年月日
      2017-03-19 – 2017-03-20
    • 招待講演
  • [学会発表] Social Space and Ethics2017

    • 著者名/発表者名
      中川眞
    • 学会等名
      The 15th Urban Culture Research Forum
    • 発表場所
      Chulalongkorn University(タイ)
    • 年月日
      2017-03-07
    • 国際学会
  • [学会発表] Urban Resilience (Keynote lecture)2017

    • 著者名/発表者名
      中川眞
    • 学会等名
      The 15th Urban Research Forum in Yogyakarta
    • 発表場所
      Gadjah Mada University(インドネシア)
    • 年月日
      2017-02-22
    • 国際学会
  • [学会発表] 教養としてのコミュニケーション教育 (基調講演)2017

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 学会等名
      日本国際教養学会
    • 発表場所
      同志社大学弘風館(京都市)
    • 年月日
      2017-02-18
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Socially inclusive arts management in Japan2016

    • 著者名/発表者名
      中川眞
    • 学会等名
      The 11th International Conference of Asian Arts Management
    • 発表場所
      Myanmar Art Resource Center(ミャンマー)
    • 年月日
      2016-12-07
    • 国際学会
  • [学会発表] Contemporary Theatre, its power and methodology2016

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 学会等名
      The 11th International Conference of Asian Arts Management
    • 発表場所
      Myanmar Art Resource Center(ミャンマー)
    • 年月日
      2016-12-07
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] わかりあえないことから -コミュニケーション教育としての日本語教育-2016

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 学会等名
      香港日本語教育研究会「国際日本語教育・日本研究シンポジウム」
    • 発表場所
      香港公開大学(香港)
    • 年月日
      2016-11-19 – 2016-11-20
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] いま演劇的な〈知〉をどう活かすか2016

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 学会等名
      神奈川大学学術シンポジウム
    • 発表場所
      神奈川大学横浜キャンパス(横浜市)
    • 年月日
      2016-10-15
    • 招待講演
  • [学会発表] 活力ある地域社会の実現に向けて2016

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 学会等名
      北海道社会教育研究大会
    • 発表場所
      富良野文化会館大ホール(富良野市)
    • 年月日
      2016-10-14
    • 招待講演
  • [学会発表] 賢治の祈り2016

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 学会等名
      宮沢賢治生誕120年記念国際研究大会
    • 発表場所
      花巻市なはんプラザ(花巻市)
    • 年月日
      2016-08-26
    • 招待講演
  • [学会発表] 文化的共有地と協同組合の理念―ゲノッセンシャフト概念を手かかりに2016

    • 著者名/発表者名
      藤野一夫
    • 学会等名
      タボック共同体支援センター国際交流協力事業
    • 発表場所
      ハンヤン(漢陽)大学校(韓国)
    • 年月日
      2016-05-07
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] 下り坂をそろそろと下る2016

    • 著者名/発表者名
      平田オリザ
    • 総ページ数
      240
    • 出版者
      講談社現代新書
  • [学会・シンポジウム開催] The 15th Urban Culture Research Forum2017

    • 発表場所
      Chulalongkorn University
    • 年月日
      2017-03-07 – 2017-03-08
  • [学会・シンポジウム開催] The 15th Urban Research Forum in Yogyakarta2017

    • 発表場所
      Gadjah Mada University
    • 年月日
      2017-02-22 – 2017-02-22
  • [学会・シンポジウム開催] The 11th International Conference of Asian Arts Management2016

    • 発表場所
      Myanmar Art Resource Center
    • 年月日
      2016-12-07 – 2016-12-09

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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