研究課題/領域番号 |
16H05671
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
小田 淳一 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10177230)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 民話 / 文学一般 / インド洋西域 / レユニオン |
研究実績の概要 |
1.収集した民話データの処理:(1) 今年度までに収録した,レユニオン島の職業的語り手による民話約四十編の音源について,語られた言語であるレユニオン・クレオル語のテキストに起こす作業を完了した。(2) 次年度(2018年度)に刊行を予定している民話集が現地にも還元される予定であることから,レユニオン・クレオル語の民話テキストのうち約過半数について,現地の公用語であるフランス語への翻訳を行った。(3) 民話モティーフの抽出を継続して行った。(4) 収録の際の映像データから,聴衆とのインタラクティヴな言語表現や身体表現の抽出を継続して行った。 2.語り手の招聘:2017年11月にレユニオン島から2名の職業的語り手を招聘し,研究代表者の所属機関である東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・情報資源利用研究センター主催による,当センター設立20周年記念国際ワークショップを2回に亘って開催した(11月17日「インド洋レユニオン島の音楽と民話」,11月21日「話芸の競演:インド洋レユニオン島の民話 VS 古典落語」)。なお,11月21日に開催されたワークショップは,レユニオン島からの語り手に加えて,我が国の伝統的話芸との比較のために著名な落語家を1名招聘し,アウトリーチ活動として一般向けの口演を行った。 3.民話集刊行のための作業(テキストの配置方法の検討及び日本語訳)を開始した。 4.研究会における報告:前述した所属機関の設立20周年記念シンポジウム(2017年12月開催)において,今まで収録してきた民話の内容や,その分析についての報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
収録した口演約40編の文字起こしを2017年度内にすべて完了し,またそのうちの約過半数についてフランス語訳を行った点については順調であると言える。また,現地レユニオン島の語り手を2名招聘し,アウトリーチ活動として我が国で初めてインド洋民話の一般向け口演を開催したことは研究成果の社会還元という意味において大きな意義がある。その一方で,レユニオン・クレオル語の正書法が定まっていないために,文字起こしの際に語り手とのコンセンサスを得る必要がしばしば生じ,そのためにテキスト校訂に予想以上の時間を要し,民話の本格的な分析には至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
収録した民話口演テキストの原語であるレユニオン・クレオル語及び現地の公用語であるフランス語,さらに日本語訳による三言語版の『レユニオン島民話集』を刊行する。その際,特殊な民俗語彙については可能な限り注を付けることによって,民話における特徴的な使用語彙の歴史的・文化的背景に関する情報も付加する予定である。また,専門家の口演における,市井の語り手とは異なる,身体性を含む様々な聴き手との間の相互コミュニケーションや,類話間の民話モティーフの異同等についての修辞学的分析を行う。
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