研究課題/領域番号 |
16H05674
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
加藤 三保子 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (30194856)
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研究分担者 |
小林 昌之 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 新領域研究センター, 主任調査研究員 (60450467)
相良 啓子 国立民族学博物館, 先端人類科学研究部, 特任助教 (90748724)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | アジア太平洋の手話 / 固有名詞手話 / 手話辞典 |
研究実績の概要 |
平成28年度(初年度)は、中国および台湾において手話語彙調査および手話事情調査を実施した。中国では北京(H28.8/7~8/9)と上海(H28.8/10~8/12)を調査対象地域とし、ろう者(合計8名)が日常生活で使用する生活基本語彙(約80単語)収録と、各地域を代表する自然・建築・人物などに関する固有名詞の手話表現の収録も行った。 中国はこれまで標準語である「普通語」の標準政策に準じて、『中国手話』を編集し、これを普及する努力を継続してきた。しかし、今回の調査で、「国歌通用手話法案(試行)」が策定、試行され、新たに「通用手話」(共通手話)が規範化されようとしていることがわかった。 台湾では台北(H29.1/2~1.4)と台南(H29.1/5~1/7)を訪問し、各地域で4名ずつのろう者を対象に手話語彙収録を行ったほか、台北では中華民国聾人協会理事および同協会の常務理事と面談し、台湾の手話に関する情報を収集した。台南では、手話収録のほかに、国立台南大学を訪問し、特殊教育学系の教授および副教授らと懇談し、盲聾者の高等教育のあり方について意見交換をおこなった。 なお、当初の計画には含まれていなかったが、本研究の2名の研究分担者がそれぞれマカオと韓国でろう者の手話表現をビデオ収録した。 平成29年度は、太平洋諸国としてフィジーを、アジア圏ではフィリピン(セブ島)を調査対象に選定し、同様の現地調査(手話語彙および手話事情調査)を実施予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定どおり、昨年度(平成28年)に中国と台湾でビデオ収録した手話語彙について、今後の分析用にデータ編集作業を順調にすすめている。平成28年度に実施した調査研究については、平成28年2月26日に開催された日本手話研究所主催の手話研究セミナーで発表した(発表者は本研究の研究分担者、相良啓子)。 また、平成29年度に実施予定のフィジー調査については、フィジーの事情に通じている研究者と連絡し、現地調査の準備を順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、平成29年度に太平洋諸国の手話語彙調査をフィジーにて実施する。また、アジア圏の手話語彙調査はフィリピン(セブ島)にて実施する。これで平成28年度と29年度に調査対象としたアジア太平洋諸国は、中国(北京・上海)、台湾(台北・台南)、マカオ、韓国(ソウル)、フィジー(ラウトカ・スバ)、フィリピン(セブ島)の6カ国9地域となった。今後は、収集したデータを手話語彙ごとに編集する作業を継続しながら、各語彙の国別表現をリストにして表現の比較研究をスタートさせる。 平成30年度は、手話語彙ガイドブックの原案を作成しつつ、調査地でろう者と懇談した際のビデオデータをテープ起こしする作業を進め、各国のろう者の社会参加および手話通訳のあり方など、ろう者と手話をめぐる諸事情についても情報を整理する。 なお、平成29年度から、国際手話が堪能な重田氏(日本手話研究所職員)に本研究の研究協力者を依頼する予定である。これにより、最終的にアジア太平洋諸国の手話語彙に加えて、国際手話の紹介も含めた手話ガイドブックの編集が可能となる。
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